平均寿命が延び、人生百年時代を迎えようとしている。
現代人は、子供から青年期に至るまで、受験や人間関係、SNS等様々な悩みやストレスを抱えており、働き盛りの壮年期以降は、雇用や教育、介護、孤独の問題に直面するなど、心身に過酷な負担を強いられている。
引退後の余生が途方もなく長くなったのを喜べるかは、次の2点にかかってくる。
・それまでの人生で、共に楽しみを分かち合える人脈を築いてこられたかどうか。
・趣味活動等、自由な時間を潤沢に使えるだけの健康と、最低限の資力に恵まれているか。
好きなことがいくらでもできる時間があり、行きたいところに行けるのは、本当の意味での贅沢である。それにはまず何よりも、身体が資本だ。
健康の概念は、WHO(世界保健機関)憲章前文(1948年)にある、以下の定義が有名である。「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病あるいは虚弱でないことではない」
1999年には、「健康とは身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状態であり、単に疾病あるいは虚弱でないことではない」と、新たに spiritual , dynamic の語が加えられ提案された。(審議には至っていない)
社会的健康の要因とは、すなわち、裕福で、富の分布が公平な社会に住む人たちは、健康である。また、どのような社会においても、社会的地位が低いと、平均寿命は短く、疾病が蔓延している。
健康観は、個々人が持つものであるが、それは各人の社会的属性と人的属性により異なり、変化する。社会的属性とは、職場、学校、地域、国、文化などであり、人的属性とは、性別、年齢、身体状態などである。
身体、精神、(霊)、社会性の内、目に見え手で触れられるものは身体だけである。身体の健康は、心の健やかさや社会生活の安定にもつながり、食事や運動など、毎日の生活習慣で意識すれば、確実に向上させることができる。
健康にいいことは、諸説多様に言われるが、根拠があり誰もが頷くのは、次の7つだ。
・身体を冷やさない
・毒素をためない
・水分をとる
・睡眠をとる
・深い呼吸
・よく歩く
・よく笑う
私たちは幸せになるために、勉強や仕事、家庭生活にも目標を立て努力するが、十分に叶わないことや思い通りにいかないことも多い。だが、挫折を経験しても、ストレスに打ち勝ち、立ち直るための原動力は、人とのつながりと元気をもつことだ。
・幸せ感は、脳が作るホルモン作用によって得られる。
・身体を作る源は、健康に良い栄養バランスの取れた食事である。
両者の生み出すパワーを、科学的に考察していきたい。
〈 幸せになるためのホルモンの働き 〉
人が幸せを感じるのは、脳からの指令で分泌される神経伝達物質による。幸福を司るホルモンで、たとえばセレトニン(心の安らぎに関与)、エンドルフィン(一種の脳内モルヒネ)、ドーパミン(快楽や高揚)、オキシトシン(愛情や安心感)など。
これらは、他のホルモンと違い、私たちの手の届く範囲で、自分で分泌を促すことが可能だ。日常のちょっとした行動や心がけで、誰でも確実に幸せになれる秘訣がある。
脳は意外と馬鹿なので、悲しい時でも笑顔を作って口角を上げると、表情筋により嬉しがっているのだと脳が錯覚を起こし、幸せホルモンを全身に流す。すると、ひとりでにうれしい気持ちになれるのだ。
1 快楽を生む食品を選ぶ
・バナナのスムージーは最強の幸福ドリンク!
・アボカド入りのグリーンスムージーも幸福感を得、ストレスを和らげるにはよく、ショウガをひとかけ加えると効果が増す。
・カボチャ、チアシード、ゴマなどの種子を野菜サラダにかけて摂取。
・魚、鶏肉、豆類など、オメガ脂肪酸、トリプトファンの豊富な食べ物
・発酵食品(漬物、納豆、ヨーグルトなど) 血管の長さは全身で地球2周半くらいと言われるが、腸にはとりわけ多くの神経伝達細胞が張り巡らされており、「第2の脳」とも言われる。
2エンドルフィンを活性化させる
・1日たった6分、速足でウォーキングするだけで、ストレス解消になる。
・家族や大切な人とのスキンシップでオキシトシン生成。
(おすすめは食事前の20秒ハグ、食欲抑制効果もあり)
・ドーパミン(やる気や快楽・興奮のホルモン)を生成するには、決まった空間や生活パターンから抜け出す。未知の土地を訪ねるもよし、新しい趣味やレジャーに挑むもよし。新しい刺激により、気分が高揚するのは、「クーリッジ効果」と呼ばれ、若々しい脳を保つ秘訣である。
3瞑想する 週2回の瞑想を8 週間続けると、血中のストレスホルモンであるコルチゾール値が低下し、エンドルフィンやセレトニン、オキシトシンの生成が刺激される。なかでもオキシトシンは、情動を安定させ、社交性を高めるホルモンといわれ、ストレスを減少さすのに有効。
4早起きする
太陽の光はセレトニンの分泌を増大させる。日光を2時間浴びると、自分の体は元気だと感じるようになり、食欲が適度に抑えられ、集中力が増し、記憶力も上がる。
5友人に会う
社交的な人は、心を閉ざす人より幸福である。友人の名を思い浮かべるだけでも、セレトニン値は上がる。最も効果的なのは、そうした友人知人と展覧会やコンサートに行くこと。アートは、合理性の左脳と感情の右脳を同時に「くすぐる」からだ。これが私たちに、真の幸福感をもたらす。
〈 健康の源である食事法について 〉
現代人は、質量ともに摂りすぎている。(特に糖質、脂質) 若返り効果のためにも、小食は価値がある。
巷に様々なダイエット・食事情報が溢れているが、どれが絶対というものはなく、自分に合った続けやすいものを選ぶのがよい。菜食だけの食事が合う人は、4人に1人である。外食も含め、完全なビーガン(菜食主義)を実践することには相当な覚悟がいる。下手をしたら、人間関係も狭めかねない。パレオダイエットという、原始人の食品のみにするダイエット法がモデルの間で流行したが、やせるとはいえ栄養価は低いので、長期的にはリスキーである。
そもそも、医学的に正しいと言える食品の評価基準はあるのだろうか。
メタアナリシス(複数の結果の統合による解析)によれば、
医学的にいい食材は
・オリーブオイル
・ナッツ
・魚
・野菜、果物
・茶色い炭水化物(玄米、そば、全粒粉)
医学的によくない食材は
・白い炭水化物(白米、小麦粉)
・赤い色の肉(牛、豚、羊)、ハム、ソーセージ
・飽和脂肪酸(ラード、バター、ココナッツオイル、パーム油)
メタアナリシス的に、いい・悪いが定められるのは、上記8つのみ。
伝統的な和食、漢方、アーユルヴェーダ(インドの世界最古の生命科学)は、経験的にいい。漢方やアーユルヴェーダは、本格的なものは食材が高価だったり手に入りにくかったりするため、日本人にはやはり和食が手軽に続けやすい。
経験的に正しい和食とは、
・玄米、そば
・発酵食品(味噌、漬物)
・魚
・野菜、果物
(ただし、白米と塩分の摂りすぎに注意)
現代人が心がけるべきことは、次の6つである。
1糖質の最適化
糖質は1日ごはん2杯分、100gはとる。
砂糖は1日24g(ティースプーン6杯、缶コーヒー2本分)
・糖質のとりすぎは味覚を破壊する。
・糖質制限はダイエットには効果的でも、長期的には健康を損なう。
・脳の必要とする栄養は、ブドウ糖とケトン体。糖質(=ブドウ糖)制限すると、ケトン体が余計に必要となる。ケトン体は脂肪を燃やす→やせる→酸性になる。
・健康に必要な身体の状態は弱アルカリ。酸性状態が長期続くと、健康リスク大。
2糖化食品を避ける
GI値50以上の食品(揚げ物、天ぷら、ブドウ糖、フランスパン、はちみつ、白米)
・糖化=余分の糖質が細胞を劣化させる。しみ、そばかす、身体の焦げの原因。
3脂質、油の量と質に注意
マーガリン×
・飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を避ける。
・オメガ3系脂肪酸をとる。
4抗酸化食品をとる
野菜、色鮮やかな食材、豆、ビタミンC
・酸化=身体のサビ、しわ、くすみ。
5添加物を避ける
コンビニ食品は100%×
・グルテン(=小麦粉のねばねばした物質)は、日本人には合わない人が多い。
(アレルギーやグルテン中毒)
・グルテンフリーを1週間やると、半数は体調がよくなる。
6酵素をとる
漬物、納豆、果物、生野菜、刺身、海藻
・食物酵素を大量にとると、消化→吸収→排泄 を高める。
・よく噛む=世界中全員重要。消化の素。
・腸内環境を整える→腸脳相関 腸がよくなると、脳が支配するすべてがよくなる。
・キャニオン・ランチ・ツーソン(米アリゾナの富裕層向けの宿泊型健康施設)
1週間で50万、専属のパーソナルトレーナーがつき、健康の講義や実践を行う。
そこで得られる結論が、発酵食品がよい、ということであるらしい。
最後に、現代社会においては、身体に悪いものを全くとらないことは不可能である。
そこで、ホメオスタシス(=恒常性維持機能)の適正化、すなわち、「出す」ことが大事になってくる。それには、ファスティングがベストである。
ファスティングとは、食べない時間を作ること。全く何も摂らないのではなく、酵素ドリンクやスムージーにする。ファスティングを行う期間と同じだけ、準備期間と復元期間をとる。
いわゆるプチ断食は、〈若返り〉のホルモンであるモチリンを活性化させる。お腹がグーと鳴るのは、モチリンが活発に働いている証拠である。
過食をやめ、よりよい食事や生活習慣を心がけて、心身共に若々しく生き生きと、健康寿命を延ばしたいものである。 |