この前の回(第69回)では、文学史を都々逸で遊んだ。
実際に作ってみた人ならわかると思うけど、できた「作品」を読むよりも、ああでもない、こうでもない……と作っている過程のほうが結構覚えるんだよね。
国語ばかりではない。日本史、世界史というと年号の語呂合わせが定番で、問題集や参考書に「傑作」がたくさんあるが、これも自分で考えてみるともっと覚える。
例によって都々逸でもいける。
たとえば、第一次世界大戦後のドイツとフランスを舞台にすると…… 。
兼ドイツに勝った
連合国軍
領土をくれと
クレマンソー
―― クレマンソーはフランスの首相。ヴェルサイユ条約でドイツは植民地を失い、アルザス、ロレーヌもフランスに返還された。
ポワンとしてても
カレは怖いぞ
負けたドイツを
なお叩く
―― フランスはそれでも安心できず、ポワンカレ内閣はドイツにさらに厳しい態度で臨んだ
協調路線で
ブリッ子したい
ケロちゃん誘って
条約だ
―― だが、ブリアンはドイツとの和解に努め、合衆国のケロッグ国務長官と一緒に各国に呼び掛けて、不戦条約(ブリアン=ケロッグ条約)に調印。
......とこんな具合に、歴史に沿って話を作ってみると面白い。
では、国語にもどろう。
小学生から大人まで楽しめるのが、ことわざパロディ。
もとのことわざを当ててみよう。
暑さ寒さも玄関まで
――夏まっ盛りだが、たいていの家はエアコン完備なので、炎天下を歩いてきても玄関までの辛抱。もちろん例外もあるが......(涙)。
楽あれば得あり
―― とかくこの世は不公平。金持ちや美人ばかりが、楽して得して……(涙)
石橋を叩いて壊す
―― おっと、ヤケをおこしてはいけない。ここはじっと我慢……
前門の虎、黄門の助さん角さん
―― ね。暴れたって袋の鼠。
お袋のネズミ
―― それじゃ貧乏人の子沢山だ! |
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主婦の利
―― 貧乏だって庶民は強い。バーゲンセールでのオバサンの勇姿を見よ!
イワシの頭もカルシウム
―― お残しは許しません! 頭だって栄養があるってわけ 。
腐っても食べたい
―― それはただの食いしん坊。お腹こわすからやめなさい 。
世の中のカミさん大金を知らず
―― 何億円の脱税なんて聞いても、オバサン達にはピンとこない。
能ある母は金を隠す
―― それでもちゃんとヘソクリは忘れないのが、賢い母さん。
ケチは災いのもと
―― だけど、ただのケチは家庭崩壊を招く。
壁にシミあり障子にゴミあり
―― 清貧なんて言ってられなくなる。 |
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悪女は良妻を駆逐する
―― 新婚当時は良妻賢母を夢みても、生活に疲れて酒浸り……
貧すればトンズラ
―― あげくのはては夜逃げなんて、子どもが哀れ。
親の心恥知らず
―― 困ったものだ…… |
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かわいい子には足袋(たび)をはかせろ
―― そう。寒い冬は幼い子につらい思いをさせてはいけない。
持てばカイロの暖かさ
―― 暖房はなくてもね……
三人寄ればもんじゃ焼き
寄せ鍋に黒豚
―― 冬はこれが美味しい。
笑う顔には皺(しわ)が寄る
―― 一家団欒(だんらん)はうれしいが、気になるのは寄る年波。でも……
老婆は一日にしてならず
―― くよくよすることはない。 |
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白髪はほっとけ
―― 若者だってわざわざ白く染めるご時世だもの
怒る元気は久しからず
―― 冬はこれが美味しい。
笑う顔には皺(しわ)が寄る
―― トシをとると人間も丸くなる。 |
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ハゲの光明
―― そして世の中を明るくします。
仏の顔も三枚目
―― 毎度バカバカしい説法でした。
……というわけで、今回はこれまで。 |
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【ことわざ正解】
暑さ寒さも彼岸まで
楽あれば苦あり
石橋を叩いて渡る
前門の虎、後門の狼
袋の鼠
漁夫の利
鰯の頭も信心から
腐っても鯛(たい)
井の中の蛙(かわず)大海を知らず
能ある鷹は爪を隠す
口は災いのもと
壁に耳あり障子に目あり
悪貨は良貨を駆逐する
貧すれば鈍する
親の心、子知らず
かわいい子には旅をさせろ
待てば海路の日和あり
三人寄れば文殊の知恵
破鍋(われなべ)に綴蓋(とじぶた)
笑う門には福来たる
ローマは一日にして成らず
知らぬが仏
驕(おご)る平家は久しからず
ケガの功名
仏の顔も三度 |