「どどいつ」って聞いたことある?
落語などにも出てくることあるけど、7775のリズムの言葉遊びみたいなもの。俳句や短歌ほど堅苦しくなくて、もっと自由で庶民的と言っていいかな。
例えば
四国西国 九州までも 都々逸ぁ恋路の 橋渡し
みたいな色っぽい内容のが多いけれど、べつに色気にこだわらなくてもよろしい。
……というわけで、きょうは中学生の文子(あやこ)ちゃん、学(まなぶ)くんと、高校生の史絵(ふみえ)ちゃんに出しておいた宿題、文学史に関係のある都々逸を作ってもらったのを披露してもらうことにしよう。
学 :兼好法師は気楽なやつよ つれづれ落書き 名を残す
――そうそう、いい調子。「落書き」ってところは兼好さんに文句言われそうだけど、ちゃんと「徒然草」が兼好法師とわかるから上出来。
史絵:川の流れに あぶくがたてば 鴨長明 ああ無常
――ユーゴー『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンは「ああ無情」、仏教思想の『方丈記』は無常観。さすが高校生だ。
無常と言えば松尾芭蕉も……
学 :おくの細道 松島の月 感慨無量で 声もなし
――「松島の月まづ心にかかりて」深川から死を覚悟の旅に出たが、『奥の細道』に松島の句は無い。
文子:竹からいい子が 出てくるのなら パンダの彼女は かぐや姫
――かわいい! 『竹取物語』だね。
学 :伊勢物語は 非民主的よ 業平ばかりが なぜモテる
――(怒)ってところだな。モテると言えば『源氏物語』だって……。
史絵:母の面影 乙女に重ね 光源氏は 恋奴隷
――美男の貴公子も恋の奴隷ときたか。艶歌(えんか)調だね。たしかに、『源氏物語』にはやたらお母さんに似た女の人が出てくる。作者は紫式部。
文子:色気はないが 才気煥発 清少納言は 花形よ
――『枕草子』は作者の感性の光る随筆だけど、男性顔負けの教養を自慢するような話も多い。よく清少納言は縮れた赤毛だったなんて言われるけど、今だったら茶髪の美女だったりしてね。文子ちゃんからもう一つある。
文子:万葉の世に メロンがあれば 憶良は泣いて 子に食わす
――家族思いの山上憶良は、一人で瓜とか栗を食っては子を偲んでびちゃびちゃ泣いてるって感じだよね。憶良といえば『貧窮問答歌』も有名。
学 :日本の神々 チョー大所帯 稗田阿礼も アレ大変
――古事記だ。あの神様の名前を全部覚えただけでもすごい記憶力。稗田阿礼(ひえだのあれ)が語り、太安万侶(おおのやすまろ)は記録係。
学 :河童に歯車 芋粥すすり お話上手な 芥川
――お、いきなり近代にきたね。『河童』 『歯車』 『芋粥(いもがゆ)』と芥川
龍之介の代表作が3つ。
史絵:門をくぐれば それからお池 心なごます 虞美人草
――こちらは夏目漱石。池は三四郎池かな。『三四郎』『それから』『門』で前期3部作。『こゝろ』に『虞美人草』と盛り沢山だ。
学くんも漱石で作ってあるね。
学 :清と坊っちゃん 仲良く散歩 猫は昼寝の 夏目坂
――漱石といえばたいていの人が『坊っちゃん』か『吾輩は猫である』から入る。
史絵:トンネルぬければ 不倫の恋も 新感覚で ノーベル賞
――むむ…(汗) ノーベル賞作家は川端康成と大江健三郎。新感覚派で「トンネル……」ときたら『雪国』の川端だね。
学 :下手くそな絵に 作文上手 正義派気取りの 白樺派
――これも手厳しい! 正義派(?)で文章の神様は志賀直哉。武者小路実篤は野菜なんかの絵をかいてるけど、良く言えば素人らしい素朴な絵で、野菜だけに味がある……。白樺派といえば有島武郎も忘れないでね。
それでは、ここで問題を1つ。
☆問題☆
きょう登場した作品や作家を、時代ごとに整理してみよう。
☆解答☆
奈良時代: |
古事記、万葉集 |
平安時代: |
伊勢物語、枕草子、源氏物語 |
鎌倉時代: |
方丈記、徒然草。 |
江戸時代: |
奥の細道 |
近・現代: |
夏目漱石、芥川龍之介、有島武郎、志賀直哉、武者小路実篤、川端康成、大江健三郎 |
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