受験勉強の中で、やり方次第で楽しくも苦痛にもなる、その最たるものが歴史である。
時代ごとに、為政者の方針により、国としてのあり方や文化、人々の暮らしもまた大きく異なってきた。
教科書や受験テキストは、事実としての知識事項のみを、時系列で伝えるものである。馬鹿のように棒暗記をすれば、テストで点は取れるかもしれぬが、それで歴史好きになるわけではない。歴史とは、人々が生きた証であり、事件が引き起こされる背景には必ずそうなる原因があるからだ。
受験の役に立つだろうと、全10巻以上もの歴史漫画を買い揃えておられるご家庭も多い。無論、読まないより読んだ方が若干効果はあるのかもしれないが、子ども用の教育漫画は概して絵もストーリーも魅力に乏しく、物語を楽しむというよりは実用性に偏った印象を受ける。
では、心底子どもたちに歴史を好きになってもらいたければ、どういうものを取掛かりにしたらいいのか。それは、親御様方がよく口にされる、子どもに本を読ませたいが、何を読ませたらいいか、というお悩みにも通ずる。
その答えは、ずばり、面白いものは価値がある、と言うことに尽きる。教科書が無味乾燥なのは、そこに生きた人間の言葉や情念がなく、フィクション性に欠けるからだ。もちろん、教科書とはそのように客観的事実を記したものでなければならないのだが。
フィクションの場合も、歴史を題材にしている以上、史実を全く改ざんするのは論外だが、書き手の解釈や想像力により、主人公や周縁の人物が、血の通った人間として、生き生きと立ち現れてくるように描かれる。
我々が心を動かされるのは、激動の時代を生きたそんな人々の、思いや哀しみ、願いなのである。優れた作品というのは、漫画であれ映像であれ、書き手の想像の翼を羽ばたかせて、人の心を打つ文学性を内包しているのだ。
馬齢を重ねる中で、徒然に任せて、何万作という古今東西の書物や映画、ドラマなどを味わってきた。無駄も多かったが、その分いいものを見極める眼力は備わったと、自負している。
最近は世界中どこにいても、家に居ながらにして物は届くし、動画コンテンツも見放題に楽しめる時代になった。若い人は、情報が多すぎて見るのがとても追い付かないから、周りと話題を合わせるために概要だけ一部かいつまんで、それで見た気になっている例も多いと聞く。
知識や情報として処理して終わり、というのは、受験勉強の弊害で、一番つまらない味わい方ではないだろうか。あらすじだけで事足りるなら、全十何巻にも及ぶ長編にする意味はないし、一時代を生きた人間の人生や思いを、僅か数十字の言葉で語り尽くせるはずもない。
歴史の、各時代を代表する人物像にスポットを当てた小説やドラマは、作者が調べ上げた史実に独自の味付けを施し、役者もまた渾身の演技をしているので、面白く見て絶対に損がないものが満載だ。
受験勉強の範囲や日程がタイトであればあるほど、息抜きや楽しみは必要だし、たとえ全巻見るのに時間がかかったとしても、良質なコンテンツは知識欲を広げてくれ、何度も読みたくなり、同じ作者の他の作品へと、どんどん読書熱を掻き立ててくれる。
それでは具体的に、本好き、ドラマ好きがハマる、秀作を紹介していこう。気軽に入れるよう、漫画・ドラマを中心にピックアップしてみた。
とにかく手に取って、片端から制覇していっていただきたい。
飛鳥 |
『天上の虹』 |
里中満智子 |
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『日出づる処の天子』 |
山岸涼子 |
奈良 |
『天平の甍』 |
井上靖 原作 熊井啓 監督 |
平安 |
『あさきゆめみし』 |
大和和紀 |
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平清盛 |
NHK大河 |
鎌倉 |
鎌倉殿の13人 |
NHK大河 |
室町 |
花の乱 |
NHK大河 |
戦国 |
『花の慶次』 |
原哲夫、隆慶一郎 |
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おんな城主直虎 |
NHK大河 |
江戸 |
お江 |
NHK大河 |
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篤姫 |
NHK大河 |
幕末 |
JIN―仁― |
TBSドラマ |
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新選組! |
NHK大河 |
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龍馬伝 |
NHK大河 |
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翔ぶがごとく |
NHK大河 |
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八重の桜 |
NHK大河 |
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西郷どん |
NHK大河 |
明治 |
『坂の上の雲』 |
司馬遼太郎 |
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『燃えよ剣』 |
司馬遼太郎 |
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あさが来た |
NHK朝ドラ |
大正 |
『はいからさんが通る』 |
大和和紀 |
昭和 |
カーネーション |
NHK朝ドラ |
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エール |
NHK朝ドラ |
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とんび |
重松清
TBSドラマ
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