1 デジタル化される学校の授業
2021年は、小学校に続き、中学校の教材が改定された。私が活動する千葉県鎌ケ谷市は、中学英語の教科書に開隆堂のSunshine English Courseを採用している。学校と違い、塾・家庭教師では、初年度の教科書販売が遅い。首を長くしながら3月を迎え、4月に生徒に配布された教科書をやっと目にした。
配布されたSunshineは、現代の子供好みの漫画の絵に紛れて英文が構成されている。内容も一新。特に目を引いたことは、ページ上にQRコード(2次元バーコード)が記載されていることだった。
これまでの教科書は、別売りで音声CDが販売されており、これを使って、ネイティブが話すゆっくりな英語を耳にすることができた。だが、昨年数人の生徒に「自分のCDプレーヤー、あるいはうちに置いてあるCDプレーヤーがあるか?」と聞いたところ、解答は「ある」がゼロだった。これではCD買っても「カラス除け」にしかならない。時代の波は、スマホにダウンロード、へと移り変わったのである。
これに対応するかのように、教科書にQRコードがついた。これをバーコードスキャンすると、音声のあるサイトへと誘導されるという仕掛けだ。使えばCDよりも便利である。が、まだまだ難点もある。まずネットにつながっていない環境では使えない。だから電波の入らない勉強部屋では使用できない。スマホで使えても、スマホの自動スイッチオフが入っていると、集中して音声を聞いている途中で途切れる。スイッチ入れてもサイトの接続からなので自動復帰しない。いやはやである。
英語に対するモティベーションが相当高い子供さんはいざ知らず、普通のお子さんでは扱いに苦労して使用しなくなる。これは、教師のためにあるコードというべきか。
全国ではどうか知らないが、千葉県鎌ケ谷市では、全中学生にクロームOSの「クロームブック」を配布して教材に役立てようとしている。無事に活用されるかはこの一年を見ながら確かめるしかないが、おもちゃの域を脱することを切に願う。このノートパソコンは、塾、家庭教師で使う仕様にはできていない。
技術の革新は、扱う利便性がないと、ついてこない人が生まれる。だが、せっかくのイノベーション、これからどんどん便利になって時代を変えてゆくであろうことを期待する。
2 変化する教材
教材の変化で注目したいのは、学校教材ではないが、NHKラジオ講座の「基礎英語」だ。従来の1・2・3の区別から、1・2・In Englishとなった。
この基礎英語in Englishというのは、その名の通り、すべて英語で英語を語る編集だ。学生役として、今や高校生の鈴木福君を起用し、2人のネイティブと日本人の先生が会話の中に巻き込んでゆく。
この教材を拝聴して思ったが、教師の側も、英語での生徒の導き方の良いサンプルとなるのではないかということ。以前から言われている、英語で英語を教える技術を身につけたい指導者にもよい参考となると思う。
流れが、いよいよ「英語で英語」になってきたとワクワクする。大学時代の指導教授に、Think in English! Be silent in English!と言われたことが懐かしい。
3 教材は変われど、いまだ変わらぬもの
教材のイノベーションは素晴らしい。生徒もパソコン必携で学ぶようになる。しかし、良くも悪くもいまだに変わらぬものがあるのが今後の課題だ。
一つ目、教師が進化についてきているのかの問題。高齢の指導者に多い傾向があるが、パソコン音痴がいまだにいる。基本的な扱いはできても、パソコンのトラブルとなるとお手上げ、普段のメンテもしない。ソフトのアップデートも人任せ。これでは子供になめられてしまう。教師にCL(コンピューターリテラシー)は必須なのだ。まず教師が進化しなければいけない。すでにWindoes10が11になるとの情報も来た。進む世の中に教師はついてゆけるのか。
二つ目、英語に関して、教材は進化しても、対面で英語を語る環境がまだ少ない。いずれはバーチャルワールドで英語を語れる技術もできるかもだが、依然として、日本人は心が鎖国中と言わざるを得ない。若い世代のきみたちには、積極的にチャンスを作り、ネイティブとのコミュニケーションの輪に飛び込んでいってほしい。
前に教えた生徒だが、バーガーショップでの会話を習ったら、早速マックで” Hello! Can you take my order?”とやってきた強者がいた。結果は、料金支払いのとこで分からなくなったからバレた、とのことだが、この勢いやよし!である。
英語を使うチャンスは自分で作るしかない。Lineの英会話で有名なデビッド・セイン先生は、会話の練習に、アマゾンのサービスに電話を掛けろという。英語が拙いお客にも懇切丁寧に英語で対応してくれるのだそうだ。このように考えると、英語を話す機会は君たち自身でいくらでも探し出せるはずだ。
教材が進化しても、自動で勉強させてくれる技術はまだまだない。勉強は君たちの学ぶ気力がエネルギーだ。積極的に前に出て、先生たちを仰天させてほしい。
デジタル教材は便利な技術で、指導者はその進歩に遅れてはならないが、教材とは2次的な補助道具だから、君たちは積極的に応用の場を自分で求めて探して見つけよう。勉強にとって大事なことは依然として、学習者本人の学ぶ気力だ。今の自分の器に満足することなく、可能性を広げてゆこう。
今はコロナでさらに自由が制限されてはいるが、この困難を乗り越えて、広い世界にとびだしてゆける日は遠くない。
4 情報の大海原へ 自己判断力をつけよ。
コロナによる自宅待機のせいもあって、学習ソフト、学習アプリが多数開発された。見れば、便利なアプリもあれば、課金狙いのクズアプリもある。これを選んでゆくのはもはや自己責任でしかない。さらに、怪しいサイトに足を踏み入れウィルスをもらうのも自己責任だ。選択肢が多岐にわたるようになった分、良いものを選ぶのは、すべて自己責任となった。
実は、自己責任でよいものを選ぶという作業は、これからの世の中に絶対不可欠なスキルなのだ。アメリカのトランプ前大統領の時にはやった「フェイクニュース」、まともに信じたら大変だ。
先日、ワクチン入手に苦難している台湾に、日本がワクチンを無償で提供した。美談だ。ところが早速、「日本のワクチンで大量死」「台湾人は日本の行為に迷惑している」などの情報がネットに流れる。どこかの個人が一言書けば、あっという間に拡散して世論を作ってしまう。これはフェイクである。見極める目を一人一人が持って判断してゆかないと、きみは烏合の衆の一人になる。
子供のころ日本では「人をだましてはいけない」と教わる。しかし国境を越えて外に出たら、そこは「だまされてはいけない」としつける国なのだ。国内であっても、インターネットが世界をつないでいる。情報の海は日本の常識の通じない恐ろしい世界なのだ。
自分を導くのは結局自分自身だ。大海原を前に、帆掛け船で乗り出すきみたちは本当大変だ。せめて羅針盤となる自分の判断力を鍛え、受け身にならず自分のこととして勉強に励んでほしい。学生のうちは少なくとも守られている。先生がいる。家庭教師がいる。君たちは今、人生の練習期間として勉強をしている。私たち家庭教師は、学習者を導く「心の灯台」となれるよう努力する。だが、卒業して大人になると、そこは頼れるもののない荒野か大海原であることを覚悟してほしい。
Try hard to stand on your own two feet!
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