一 本稿の目的
例年通り約50校分の試験問題を2月に入手し、検討した。
その結果を踏まえ、夏休みも終盤に差し掛かったことから、読者の皆様に実物の解答用紙の情報も併せて、気になった点を示し、今後「声の教育社」などの過去問の検討に生かして、合格につなげることを切に願うものである。
なお、制限時間,配点は問題用紙の表紙等に記載のあるもののみ記載した。また、出典は問題に出題者が示したものをそのまま引用し、設問を作成するにあたり改変したものも、そのまま引用する。各設問の解法や解答には、紙面の都合上、十分に触れられない点を予めお詫び申し上げる。
二 大学附属系
1 明治大学付属明治中学校 50分
大問1 説明文 (土屋賢二『あたらしい哲学入門』より,一部改変)設問14問 記述式問題の比率が12問と高く、本文が10ページと長いので、時間配分に注意を要する。
大問2 漢字の書き取り 10問 日頃からコツコツ努力する必要がある。
2 中央大学附属中学校 50分
出典が全ての設問の後に、明示されており、読み始める前に、出典を最後のページに行き確認することをお勧めする。
大問1 説明文 7ページ 10問〈内記述式1問〉 (畑村洋太郎『失敗のすすめ』(講談社,2000年)) 空所補充の問題で差が付きそうである。
大問2 随筆 11ページ 9問〈内記述式0問〉 (池澤夏樹「十字路に埋めた宝物」・『南の島のティオ』(文春文庫,1996年)全体として、50分で58の解答欄を埋めることになるので、テキパキと解くことが必要である。
3 青山学院大学付属中学校
本校の問題文は、上下二段組み。
大問1 漢字の書き取り 5問 落とすと痛い
大問2 説明文 約3ページ 6問 (春木豊『動きが心をつくる』講談社現代新書)
空所補充をテキパキと片付ける必要がある。選択式の問題は、選択肢が比較的長いので、予め慣れておく必要がある。
大問3 詩 2ページ 5問 詩を解説した文章が添付された出題形式 (座敷童子 小沢千恵 『つるばら』らくだ出版)
表現技法などを、バランス良く出題しているので、詩の勉強を欠かしてはならない。近時、物語文しか出題しない学校もあるが、青山学院は広汎に聞いてくるので、好き嫌いなく学習する姿勢が必要である。
大問4 説明文 約3ページ 6問 (中西雅之『なぜあの人とは話が通じないのか?』光文社) 空所補充をテキパキと解く必要がある。字数の多い記述式は無いので効率よくさばいて欲しい問題である。
大問5 物語文 8ページ+物語を説明した文の添付1ページ 設問9問(森絵都『永遠の出口』集英社)
空所補充をテキパキと解く必要がある。一文抜き出し、登場人物の心情の読み取りなど、解くことが満載のため、全体として時間配分に注意する必要がある。
4 慶応義塾中等部
出典が示されていない。本校の問題文は上下二段組み。
選択式と記述式で、解答用紙≪変形A3≫の解答欄が分かれているので、本番を意識した訓練の必要がある。
大問1 物語文 約4ページ 設問7問〈内記述式2問〉
大問2 随筆文 約1ページ 設問6問 (筆者は塾員=関係者か?)
大問3 いろは歌 設問4問 ある種、クイズ的基礎知識で解ける。
大問4 語句 重箱読み、画数など広汎な内容が10問、漢字の書き取り16問
語句対策は必須である。
5 慶応義塾普通部 40分
本校の問題文は上下二段組みのため、ページ数は約〇ページとした。
大問1 物語文 約4ページ弱 設問8問〈内記述式2問〉(長坂道子『旅に出たナツメヤシ』) 心情の読み取りなどテキパキと解く必要がある。
大問2 随筆文 約4ページ弱 設問8問〈内記述式4問〉(青山七恵『ハッチとマーロウ』) 比喩表現,心情の読み取りなど幅広く問うている。
大問3 説明文 約2ページ 設問2問〈内記述式2問〉(本川達雄『ウニはすごい バッタもすごい』)説明文なので筆者の問題意識を捉え、問2の空欄を利用してテキパキと解く必要がある。
大問4 漢字の書き取り 10問 落とすと痛い。
6 早稲田中学校
本校の問題文は上下二段組み。
大問1 物語文 約5ページ半 設問7〈内記述式1問〉(妹尾河童『少年H』下巻 講談社)問6は設問の指示に従い、30字を超えるように記述する必要がある。
大問2 説明文 約5ページ半 設問9問〈内記述式3問〉(苫野一徳『勉強するのは何のため?僕らの「答え」のつくり方』日本評論社) 問9の段落構成の設問は説明文では基本事項なので落とすと痛い。語句は問1で3問出ている。
三 男子校系
1 開成中学校 50分
本校の問題文は上下二段組み。
大問1 随筆文 15ページ 設問全4問記述式 (青山美智子『きまじめな卵焼き』)心情の読み取りなどをメインに問うている。解答欄はB4サイズで、二行ないし四行であり、丁寧に記述する必要がある。
大問2 図を参照しつつ、論理的思考を問う問題 本文1ページ 折れ線グラフ1 設問2問 近時,よく見る資料参照型の問題=必要だから添付されている。無理な推論をしないように心掛けて解く必要がある。
大問3 語句 5問 設問に(なお、・・・)の注意書きが多用されているので、注意する。落とすと痛い。
2 麻布中学校
本文8ページ 195行 解答用紙A3 設問12問〈内記述式解答欄12個〉(深緑野分『緑の子どもたち』)
「〜を説明しなさい。」の設問指示型記述が多く、問12は解答欄が5行であり、記述対策をきちんとしておきたい。
3 武蔵中学校
本文4ページ 問題用紙と解答用紙が一体(B4)で全6ページ 本文の前に、筆者がアンドロイドの開発・研究者である旨の注がある。設問7問 (石黒浩の文章による。なお、本文には一部省略したところがある) 記述式は解答欄が枠なしの設問があり、丁寧に記述する必要がある。 問2の対義語の問題と問7の漢字の書き取りの計9問は落とすと痛い。
4 駒場東邦中学校 60分 120点
全24ページ 下書き用紙20字×10行が二枚ある。解答用紙に句読点や鍵括弧も字数に数えるとの注がある。
本文17ページ 物語文 設問13問〈内記述式5問〉 (ねじめ正一『むーさんの自転車』) 問10が95字、問12が120字記述となっているので、記述対策は必須である。問1の漢字の書き取り 15問を落とすと痛い。問3,4は比喩表現について,日頃から突っ込んで勉強する必要がある。心情の読み取りの問題は丁寧に読み取る必要がある。全体として、作業量が多いので、その対策が大事であろう。
四 女子高系
1 桜蔭中学校
全3ページ
大問1 物語文 本文1ページ程度 設問5問〈内記述式3問〉(大久保雨咲『五月の庭で』
大問2 説明文 本文約2ページ 設問6問〈内記述式5問〉(押井守『ひとまず、信じない 情報氾濫時代の生き方』)
総じて、社会との時間調整、漢字等の語句の問題を瞬殺ないし秒殺して、記述式問題に当たれるようにする必要がある。
2 女子学院中学校
全4ページ 解答用紙B4 本校の問題文は上下二段組み。
大問1 説明文 約3ページ 設問8問〈内記述式5問〉(『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』岡田美智雄)問1の慣用表現は落とすと痛い。問2〜4の選択肢も取れてほしいものである。問8の読み書きは落とすと痛い。
大問2 随筆文 約2ページ 設問11問 (幸田家のことば『青木奈緒』)問1,9,11の語句などを落とすと痛い。問7,10の選択肢を正確に吟味できるように日頃から、心掛けて勉強してほしいところである。
3 雙葉中学校
本校の問題文は上下二段組み。解答用紙は両面印刷で、裏面は大問三の漢字等の解答欄がある。
大問1 別紙の文章を読み,答える問題
別紙には,(田中陽子『ゆずりはの詩』)が約2ページ、掲載されている。設問14問〈内記述式7問〉 問8のような基本的な四字熟語等を織り交ぜて、緩急の効いた出題がなされており、ペースに乗って解答したい。問14は正しいものをすべて選べとの設問指示を見落とさないように注意したい。問3,5,7,9,10,13は記述式であり、設問指示に注意して解く必要がある。
大問2 (辻村深月『光待つ場所へ』)が、上段に約1ページ掲載されている。設問12問〈内記述式4問〉問1など基本的な語句の問題を落とすと痛い。問5はすべて選びなさいとの設問指示に注意して解く必要がある。問7は、解答事項が二つあるので注意して解く必要がある。問11は比較の視点を意識して、本文に依拠して書く必要がある。
雙葉の本番で『打ちのめされない』ように、残りの時間を大事にされたい。
五 補足
本来であれば、千葉県、埼玉県の1月校もここでご紹介したかったのだが、紙面に限りがあり、取り上げることができなかった。今回、解答用紙の体裁が判明した学校については、可能な限り本稿で触れた。市販の解答欄が実物と異なっていることもある。各学校の受験説明会に参加されて、実物大で答案練習をしみてはいかがだろうか。私も、実物大にした答案用紙で、可能な限り本番と同じように解いてもらうように指導している。
この夏、近畿地方でありました地震、各地で発生した大規模な水害などの被害に遭われました皆様に、心よりお見舞い申し上げます。 |