1学期も後半、夏休みももうすぐ、という季節になりましたが、皆さん勉強は順調に進んでいますか?今回は数Cで勉強する行列について考えてみたいと思います。
行列は数が規則正しく並んだもので、例えば電車の時刻表や成績表など、良く見かけるものです。規則正しく並べる、という事はとても意味のある事なのです。
行列の演算について考えてみましょう。加法、減法はそれぞれの行列の対応する成分の和と差でしたね。実数などの計算と同じです。
計算法が大きく違って戸惑うのは行列どうしの乗法ではありませんか?
では次の例で積について考えてみましょう。
<例>
A君は、P店とQ店で、それぞれ、ケーキを2個、シュークリームを3個買いました。P店ではケーキは1個150円、シュークリームは1個100円です。Q店ではケーキは1個120円、シュークリームは1個80円でした。
A君のP店、Q店で支払う金額は、
P店: 150×2+100×3 = 600
Q店: 120×2+80×3 = 480
となりますね。
ここで1個当たりの値段をケーキ、シュークリームの順に横の行に書き並べます。1行目にP店の値段を、2行目にQ店の値段を順に書き並べてみると、
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買った個数をケーキ、シュークリームの順に縦の列に書くと、
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A君のP店とQ店で支払う金額は行列の積で次のように表せます。
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さらにB君がケーキを5個、シュークリーム8個買ったとすると、B君の支払う金額は、
P店: 150×5 + 100×8 = 1550
Q店: 120×5 + 80×8 = 1240
P店、Q店のケーキ、シュークリームの値段、A君、B君の買った個数、支払う金額は2×2行列の積で次のように表せます。
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上の支払う金額の計算と比較すると、ケーキ、シュークリームの値段、個数、代金がすっきり行列の積で整理して表せることが良く分かりますね。
では、除法?について考えてみましょう。
数の乗法では0と1というと、a × 0 = 0, a ×1 = a のように0 になる、元の数になる、といった特別な性質があります。
2×2行列では0 に相当するのは零行列O 、また1に相当するのは単位行列E
で、
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AO = OA = O, AE = EA =A が成り立ちます。
数と同様に考えてみると、ある数をkで割る、という事はその逆数を掛ける事でしたね。k の逆数とは、k ≠ 0 のとき、k x = x k = 1 となる数x をkの逆数といいましたね。
行列についてもある行列A に対し、AX = XA =E を満たすX が存在するとき、これをA の逆行列といい、A−1 と書きます。
つまり 行列の割り算、とは逆行列を求めてそれを掛けることで求められるわけですね。
さっきの定義から2×2行列の逆行列を求めると、
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となります。
数の時はk ≠ 0 のとき存在していたk の逆数ですが、逆行列はad - bc ≠ 0 のときに存在しています。 |