先日、国立大学を目指している生徒さんからこんな質問を受けました。
生徒:先生、高校1年のとき習った相加・相乗平均の関係式ってどんなとき使うんですか?
先生:うーむ、どんな時って言われてもね。問題を見せてもらわないと困るけど。おそらく君の言っているのは、どうして最大値を求めなさいとか、最小値を求めなさいって問題に相加・相乗平均の関係式を使うのかわかないってことかな?
生徒:まぁ、そんなところです。
そこで、教科書や、チャート式数学などをパラパラめくって見ても、「なんのためにこの関係式があるのか?」ということについては一言も触れていない。自分で考えなさいということなんだろうけど、こういうところが不親切なんですね。ということで3分ほど授業します(笑)。対象は、すでに相加相乗平均の関係式はなんとなく知っている方です。
さていきなりですが、不等式を扱う上での、ごくごく初歩的な式の眺め方から。
質問1 以下の不等式をあなたはどう読みますか?
? x≧3
? x≦3
質問1の答え:
? xの最小値は3です。
? xの最大値は3です。
こんな感じですが、なんどもつぶやいて感覚を身に着けてください。普通だと、xは3以下とか読んでしまいますね。ここでは、そういう読み方はやめましょうと言うことです。
そしてさらに、
質問2
x>3のとき、xの最小値を3と答えましたが、これは正しいですか、誤りですか? またそれはなぜですか?
質問2の答え
誤り
理由は、>(大なり)の記号は、等号(=)が下についてないので、Xが3をとるということはありえません。したがって、最小値は存在しません。
さて、ここから本題です。相加・相乗平均の関係を使って最大最小問題を解く時は、一定の目的意識があります。それは、次のようです。
目的? |
与えられた式≧一定値 |
目的? |
与えられた式≦一定値 |
ここを目指して式を変形すれば、最小値や最大値が求まるわけです。そんな時に大いに力を発揮してくれるのが「相加・相乗平均の関係式」ととらえます。 そこで、ちょっと意地悪な質問をします。
質問3
XとYを実数とします。
3X+6X2≧2Y が成り立つとき、3X+6X2の最小値は2Yとなります。
これは正しいですか、誤りですか?
質問3の答え
誤り
理由:2Yは実数で、さまざまな値をとり得る記号(変数といいます)なので一定値とはいえません。したがって、最小値とはなりえません。
ここまでじっくり読んでいただけば、皆さんのお手元にある参考書等をチェックしていただくと少しは理解が進むんじゃないかと思います。
最後に、上の質問2に関係したことで、よく聞かれた質問です。
生徒:どうして、相加相乗平均の関係式を使って解答するときいちいち等号が成立する条件を述べなくちゃいけないんですか?
もっともな質問です。
これにはこう答えます。
先生:まれに意地悪な問題があって、そういうのを経験するとわかるんだけど、相加相乗平均の関係を使って解答をすると、実は、等号となるような数が存在しない場合があるんだよ。そうしたら最小値があるといっておきながら実は存在しないじゃまずいでしょ。それで、ちゃんと等号が成り立つ、つまり最小値が本当に存在するんだということを述べなくちゃいけない訳なんだ。
(この意地悪な問題を知りたい人は、是非「新課程基礎からのチャート式数学?+B(通称青チャート)」33ページ基本例題19番の問題(2)などを参照してほしい。)
最後に、今皆さんがお使いになっている参考書で構いませんので、以下の分野から相加・相乗平均の関係式を使っている問題をセレクトしてどういう状況で使われているか研究してみて下さい。
? 指数・対数関数・・・・センターではかなり狙われるところです。要注意
? 微分・積分・・・・解答の最後の方で登場することがあります。そのため切り札になること多し。
? その他、他の分野でもちょくちょく使われますので、気がついたら、まとめて問題にリンクを張るなどして分野を超えてもすぐに参照できるようにしてみてください。 |