21世紀は創造性と個(オリジナリティ)の時代。
既存の価値観にとらわれない、まったく自由な発想で創造されていく新しい時代です。
今、ダイナミックな時代のうねりを誰もが感じとっています。
偏差値を伸ばすだけの学習や世間に合わせた学校歴を得るためだけの〈お勉強〉では、新しい時代に求められる能力やコペルニクス的変化には適応できなくなります。
必要なのは、自分自身の創造性。
人生そのものがクリエイティヴなものだからです。
秀作や名作などの文学世界を味わうことで、作家の創造力の源泉である、内面の世界を感じとり、学ぶことが可能です。
小説は〈現代〉を描くもの。作者のかかわっている、自分の内部の〈今〉を描くものです。
すぐれた作家ほど、人間の心の深奥にある、無意識の領域に迫り、〈現代〉を鋭く描いています。
悪徳や破壊的なものをあえて描いている作品にも、既成の価値観をこわし、未来の可能性を開く、作者の意図やエネルギーを感じとることができます。
作家の創造力は、日々の想像力の訓練をベースに生まれてくると思われます。
作品世界の構築には、作家の発想や感覚だけでなく、豊かな想像力の活動を通じて、本質に迫る〈リアリティ〉が必要となります。
小説としての想像力とは、事実にもとづきつつも、ありうる事実を考えてゆく力――新しい事実を創造する力です。
文学作品が描く世界は、作家の想像力によって〈事実らしさ〉を創造したものです。
素材となった事実を自由に変形し、テーマや意図の具体的肉付けをしていく造形力にささえられています。
再構成の名手として知られる川端康成の名作「伊豆の踊り子」は、美しい幻想的なファンタジー、と評価する作家もいます。
自意識に苦しみ悩む人間が救われる可能性を描いた小説ですが、それは表面的なストーリー的解釈にすぎず、作品のねらいは、踊り子にふれ感じとり、それによって変わっていく「わたし」の心の感じ方にあります。
作品構築において、言葉を選びとる作業が、作家の想像力と再構成力によってささえられています。
体験をもとに再構成した〈小説空間としての現実〉が、内面感覚と豊かな想像力によって見事に描き出されています。
世界の文豪といわれるヘミングウェイは、かつて三流の作品しか書けなかったといわれていますが、フランスで出逢った画家の女性によって救われます。
その後の彼の作品が、作家としての人生が、一変します。
その魅力的な女性の助言で、彼は日々、再構成の訓練を重ねていきます。
一つの短編に、五〇〇回以上の手直し、推敲を重ねたといわれます。想像力をベースにした〈再構成〉の産物です。
テーマや意図を与え、〈より現実らしくなる〉物語のストーリー作りを、あなた自身の想像力をつかって楽しむ習慣をとり入れてみてはどうですか?みずみずしい感性豊かな若さの時代に。
あなたの体験やまわりの出来事を自由に変形し、色づけをして物語を構築してみて下さい。
ある作家が語りました。
「イマジネーションの訓練によって創作力が開発され、秀作が生まれてくる」と。
人生そのものが、言葉による構築力によって切りとられた物語です。
〈現実感覚〉とは、言葉による想像力の産物なのです。
〈おすすめの参考書〉
「プロの編集者による文章上達〈秘伝〉スクール」
「文章王」
(メタ・ブレーン)村松恒平・著
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