「本を読むのはまあ好きなんだけど、作文を書くのは苦手なんだよね〜」 「夏休みに読書感想文の宿題が出るとホントゆううつなの」 皆さんの中にこんな人はいませんか。 心配はいりません。日本語を話せる人であれば、誰でも必ず文章が書けるようになります。でも、上手に書けるようになるためには、少し練習が必要なのです。自転車に乗るにも、プールで泳ぐにも練習が必要ですね。では、文章上達のためにはどんな練習が必要でしょうか。
まず書くことに慣れましょう!
私は生徒によく日記を書いてもらっています。「毎日書くことなんて見つからないよ」という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。何か書くことはないかと目を凝らして周りを見わたし、今日一日起こったことを思い出してみれば、ネタはどこにでも転がっていることがわかります。
ある女の子のお気に入りのネタはその日の夕食のメニューでした。「今日のごはんはハンバーグとツナサラダとだいこんの味噌汁でした。」これも立派な日記です。
ある男の子は、その日の学校の時間割を書くのが得意です。「今日は道徳と国語と体育と社会と算数でした。」これでもいいのです。
このように、ほんの少しでも毎日書くということは、とてもいい文章の練習になります。日記を書くことを通して、まずは書くことに慣れましょう。自分一人では続けられないという人は、お友達と交換日記をするのもおすすめです。一冊のノートを用意して、今日自分が書いたら、翌日は相手が書くというふうにすれば、相手が書いた日記を読んで、それに対する感想やお返事も書けるので、楽しく続けられるでしょう。
詳しく書く
さて、毎日書いていると、だんだんマンネリ化してきて、飽きてくることがあります。こういうときは一歩先へ進むチャンスです。今度は「詳しく書く」ことを心がけてみましょう。作文を書くときは、読む人にとってわかりやすいように、起きたことを詳しく書くことが必要になってきますから、これも日記で練習するといいのです。
では、詳しく書くにはどうしたらいいでしょうか。これは、実はとても簡単なことなのです。それは、もう一人の自分とおしゃべりを楽しむようなつもりで、いろいろな問いかけをしてみるのです。
夕食の後でテレビを見たとします。何という番組でしたか? バラエティーですか、ドラマですか、ニュースですか? ドラマならどんな物語でしょう? 誰がどんな役で出ていましたか? 印象に残った場面やせりふは? テレビは一人で見た? それとも家族と一緒に? 見ながら家族とどんな話をしましたか? ・・・などなど。
学校で体育の授業があったとします。何をやりましたか? バレーボール? マット運動? フォークダンス? 誰がゴールを決めたんだっけ? クラスで一番上手なのは誰? 体育の後の給食はおいしかった? ・・・などなど。
ほかの人と直接おしゃべりをするときも、こんなふうに人の話に興味を持って、どんどん質問をして話を引き出してあげると、会話が盛り上がりますよね。文章も同じで、自分に向かって面白い問いを発することができるようになれば、文章はどんどん豊かになっていきます。
実践!「一人おしゃべり」
では、実際にどうやるのか見てみましょう。
Aさんが心の中で架空の友達とおしゃべりしています。
「今日は道徳と国語と理科と体育と音楽でした」
「音楽は何をしたの?」
「今日は笛」
「何を吹いたの?」
「『マイウェイ』っていう曲だよ」
「上手にできた?」
「前よりはね。でも、私のとなりの井上さんのほうが上手だよ」
「上手になったらどこかで発表するの?」
「それはないけど、来週笛のテストがあるんだ」
「テストは一人で吹くの?」
「そうなんだよ、それもみんなの前で。緊張するから嫌だなあ・・・」
次はB君。B君も時間割の話から始まりましたが、おしゃべりは全然違ったほうに展開していったようです。
「今日は道徳と国語と理科と体育と音楽でした」
「体育はどんなことをやったの?」
「バスケだよ」
「試合したの?」
「最初はパスとかドリブルの練習をして、後半にチームに分かれて試合したよ」
「何試合したの?」
「2試合ずつかな」
「君はバスケ得意だよね。活躍した?」
「まあね。ドリブルが得意だからさ」
「じゃあゴールもバシバシ決めたんだ」
「いやあ、シュート打つのは下手なんだもん。だからタケちゃんにパスしてシュートしてもらうんだ」
「タケちゃんはシュートが得意なのか」
「そうそう、タケちゃんはスポーツは何でも出来るんだよ。サッカーもうまいし」
「ふーん。で、試合の結果はどうだった?」
「一勝一引き分け。まあまあってとこかなあ。おなかすいた・・・」
どうですか? こんなおしゃべりなら、どこまでも続けられそうではありませんか?
では、今度はこれを文章の形に変えていってみましょう。例えばAさんのはこんな感じ。 「今日、学校で音楽の時間がありました。今は『マイウェイ』を笛で吹く練習をしています。私は以前よりは上手になりましたが、来週笛のテストがあるので、もっと練習しなければなりません。テストでは一人ずつみんなの前で吹かないといけないので、緊張します。私のとなりの井上さんは笛が上手なので、今度教えてもらおうかな。」
ね? こういうふうにすると、意外とたくさん書くことってあるでしょう?
見たこと、聞いたこと、起こった出来事について「いつ?」「どこで?」「どうして?」「どんなふうに?」「その結果どうなった?」「これからどうするの?」と、たくさんの質問をする知りたがり屋の友達を心の中に一人持ってごらんなさい。きっと書くことが楽しくなりますよ 。 |