作者は正直なところ、眼前に揺れているコスモスの花を見ているのでもなければ、旅の最後の夜、グラスを傾けながらほろ酔い加減で勝負を賭け、思い出を飾ろうというのでもありません。
恋を知り初めし少女のときめきも、今ではもうすっかり遠い記憶の彼方……
しかし、現実にはどうということのない毎日に明け暮れする、ただのオバサンであったとしても、―――なれるのです! 一句ひねれば、あらあら不思議! ♪☆ 妖精の杖をもった「もう一人の自分」に……
風の中の 羽のように
いつも変わる 女心 <ヴェルディ『リゴレット』(女心の歌)より>
元々の原詩では、男心だったと言われていますが、女心もまた秋の空以上に、不安定で変わりやすい、複雑なもの。だからこそ、一瞬一瞬の移ろう想いや惑いを、定型にあてはめ確(しか)と記していくことは、見えるものはもちろん、見えないものを知るきっかけともなり、思いがけない<発見>を生むのです。
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