大学受験を控えている君、目標の大学・学部が小論を課すというだけで、最初から諦めてしまってはいないだろうか。
実は、小論ほど攻略しやすく、目に見えてはっきりと差がつく分野もない。
小論の勉強は、志望動機や大学で何を学ぶかを、自分自身で深く掘り下げて考える「修練の場」といえる。また、普通の受験知識を超えた、幅広い視点やものの考え方、リベラルアーツ(一般教養)等を培うことにもつながるので、「大学での学問にそのまま生きてくる」と、やり遂げた受験生の満足度は高い。
しかし、やみくもに独りで勉強していても、これでいいのか、本当に力がついたのか、自分ではわからずに不安になるというのが正直なところだろう。
プロの家庭教師によるマンツーマン指導で、効率よく添削とアドバイスを受けるのが、最も効果的なのだが、今、この頁を開いてくれた君だけに、私がいつも生徒に説いている、「文章技術の上達法」を手っ取り早く伝授しよう。
1.ラブレターのつもりで書け!
推薦入試やAO入試では、出願の際の志望動機や身上書、小論に際し、自己アピールが要求される。自分がその学科でどういうことをやりたいのか。相手をよく知った上で、己を知らしめる。面接の時はこれをもとに、突っ込んだ質問がなされるのだから、ゆめゆめ疎(おろそ)かにしてはならない。正直に飾らず、いかに熱い思いを伝えられるか。言ってみれば、見合いにおける<釣書>のようなものだと思っておけば、間違いないだろう。
この類の入試では、そもそもアピールするだけの何かをもっていなければ、出願自体が難しい。人の真似できない特技や、今までの努力・創意工夫を武器に、堂々と勝負するのがよい。
2.テーマを絞り、明確に!
与えられた題意、条件から外れてはいけない。賛否を述べよ、という場合には、根拠を踏まえ、はっきりと賛成か反対かを結論付けること。
小論では、比喩や修辞の多用や曖昧な表現は避け、自分の考えを断定的に述べるのが、むしろ好ましい。
3.独自性・客観性をもたせよ!
反論を招く余地のある、独り善がりの説にしない。問題提起した上で、一般的な考えに対し、根拠を挙げて反論し、自分ならではの意見を展開する。ex<たしかに、〜しかし>
その際、身近な友達・家族・近隣に限定されるような、卑近すぎる例は使わない。誰が読んでも納得できる、説得力の備わったものであることが大切だ。
4.概念化・抽象化せよ!
合格レベルに到達する秘訣は、表現力の高さである。
全体の構成を「骨=意見・主張」と「肉=根拠・具体例」に分ける。
具体例はできるだけわかりやすく「肉付け」する。それにより、リアリティと説得性が生まれる。真骨頂である「骨」の部分は、理念を定式化していくプロセスなので、思索を深化させるにふさわしい、より<概念的>で<抽象>レベルの高い表現が望ましい。
一文を長く書くと回りくどくなるので、簡潔な文を心がける。言葉を言い換えて、主張内容をたたみかけるように、強調するのがコツ。
5.構成の「型」を意識せよ!
「序論・本論・結論」の三段構成と、「起・承・転・結」の四段構成が一般的である。
前者では
「序論」=話題・問題提起、自説の提示。
「本論」=根拠・具体例、一般的な考えに対する反論の展開。
「結論」=結び・まとめ。
後者では
「起」=話題を起こす。
「承」=それを承け、発展させる。
「転」=話題や視点に、転回や飛躍がみられる。
「結」=結び・まとめ。
「起・承・転・結」は、三段構成をやや高度にしたものと考えればよい。
また、両者は、以下のようにリンクする。
「序論」=「起」または「起・承」
「本論」=「承・転」または「転」
「結論」=「結」
さらに、各段落それぞれに「骨」と「肉」を明示し、論旨の展開上、接続詞を効果的に使うことにより、読む人に自分の考えが正確に伝わるようにする。
「文章上達に王道なし」とはいうが、人の心に訴えるような文章を書くには、まず技術や訓練が必要なのである。文を磨くことは、日本語を豊かにし、人間を磨くことでもある。
大学受験という目標を通じて、古今東西の名文を咀嚼(そしゃく)し、自分の表現力を高いレベルまで研磨していった経験は、「合格」の喜びだけに終わらず、後の人生にも計り知れない自信をもたらすこととなるだろう。
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