英語の問題といっても、言葉の問題ですから、国語と同じ「常識的な」問題が出ます。その常識は皆さんが持っている「常識」なんですから、落ち着いて頭を使い、自分の常識を使えるようにしておくことが、やはり大事です。
具体的な例を挙げてみましょう。2004年度の埼玉県の公立高校入試問題からです。本文の内容と合う物を選ぶ選択問題なのですが、明らかに消せる選択肢があります。どれだかわかりますか?
ア. Mr. Davis is drawing a picture in the Art Room.
イ. Miyuki wants to make animations which will make people happy.
ウ. Mr. Davis learned Japanese through Japanese animations in his country.
エ. Miyuki has a robot which always helps her with difficult things.
訳すと
ア.デイビス氏は美術室で絵を描いているところだ。
イ.みゆきは人を嬉しくさせるようなアニメを作りたいと思っている。
ウ.デイビス氏は自分の国で、日本のアニメを見て日本語を学んだ。
エ.みゆきには、困ったときにいつも助けてくれるロボットがいる。
明らかに消せるのはエです。選択枝エには、 always がありますね。意味は「いつも」ですが「100%いつも」なのです。たとえ、この例文が、Nobita has a robot which always helps him with difficult things. というものであっても、○か×かと問われたら、×になるんです。なぜなら、ドラえもんはたまにのび太を見捨てることがありますね。100%ではないから always ではない。このように、例外を許さない always は×な答えを作る道具なんですね。
また、2004年の佐賀県公立入試問題には
エ. Kayo has never played volleyball, but she wants to learn from Isis.
というものあります。意味は「カヨはバレーボールをした経験がないが、イシスから習いたがっている」ですが、カヨがバレーボールをしたことがないというのはどうなんでしょうか。ここの never は、 always とは反対で、0%なんですね。今どき、学校の体育の授業でもバレーボールくらいはやりますし、まずバレーボールをやったことのない日本人中学生というのはさがすのも難しいはず。この never も間違った選択枝を作るときに使われる物なんですね。
参考までに、100%を表す言葉には、all, always, every, each, everyone, everybody,everything などがあります。
また、0%を表す言葉には、no, not 〜at all, not any, never, no one, nobody, nothing などがあります。
このほか、1つに限定する表現も、間違い選択枝を作るのに使われます。 just, the only, the best などの最上級などがありますから、見つけたときは注意してください。
また、このような問題もあります。2004年長野県公立入試問題です。ユニセフに関係した文章が出され、飢えに苦しむ赤ん坊の写真まで入っている長文で、内容に合っているものを選ぶ問題です。
ア.There are about 30,000 children who cannot go to school.
イ.UNICEF has done many things to help poor children for 85 years.
ウ.Fumiko and Takashi think people in the world should help each other.
エ.Mr. Young thinks giving money to UNICEF is the best thing to do to help children.
オ.Takashi knows nothing about children in other countries.
カ.Fumiko thinks she has to know more about the situation for poor children.
訳すと
ア.学校に行けない子供たちが約30,000人いる。
イ.ユニセフは85年間、貧しい子供たちを救うため多くのことをしてきた。
ウ.フミコとタカシは世界の人たちが助け合うべきだと考えている。
エ.ヤング氏はユニセフに金を預けるのが子供たちを救うもっとも良い方法だと考えている。
オ.タカシは他国の子供たちについて何も知らない。
カ.フミコは貧しい子供たちの状況をもっと知らなければ、と考えている。
それぞれ考えてゆきますが、
アは場所が書かれていませんから、世界で、と考えます。が、それにしても人数が少ない。2003年で全世界には1億2300万人以上の未就学児がいるとユニセフは言ってます(http://www.unicef.or.jp/siryo/prs_128.htm)から、明らかにおかしい。×。
イは、今年から数えても85年前は1920年です。第一次世界大戦が終わったあとのベルサイユ講和会議が1919年(みんな行く行くベルサイユ)ですから、その翌年に国際連合の組織であるユニセフが存在するわけない(ユニセフの歴史はhttp://www.unicef.or.jp/uni/his.htm)。常識的に×。
エも、日本の自衛隊イラク派遣問題で言われた「金だけ出せばいいのか」という議論に似ていますが、公立の問題に、こういう極論を出す人が出るかどうかが怪しい。the bestという最上級の断定も臭い。結果的には×です。
オも、今どき外国の子供たちについて何も知らないような人間を探す方が大変ですね。0%語のnothingに注意です。誤答作成道具です。×。
正解はウとカですが、この反対を考えてみてください。「世界の人が助け合わない方がいいと思うフミコとタカシ」とか、「貧しい子供たちの状況をもう知りたがらないフミコ」、などという人物が、文部科学省推薦の公立高校入試問題に出るはずありませんよね。
この問題は、自分の持っている「常識」を埋もれさせないようにして、問題から一歩引いて冷静に眺めればわかることのはずです。試験中に動揺したときは、自分の視野が狭くなっています。たとえば“Three plus four is five.”という英文が正しいかも、と思えてしまいます。そんなとき「3たす4は7なのだ!」という自分の常識を忘れずに、はっきりと白黒つけることが大事です。あわてそうになったときは、「一歩下がって広く見る」を忘れないでくださいね。 |