ミダスはフリジアの王だった。
彼は自然の物事に興味があったので田舎で暮らすのを愛し、野の神パンを崇拝していた。パンはパイプで有名でその技術を誇りにしていた。それで音楽でアポロと競おうとした。
アポロは太陽の神であるばかりでなく竪琴の神でもあった。
パンの挑戦は受け入れられた。そして審判は山の神であるトモルスだった。彼がパンに演奏を命じると、パンはゆっくりパイプを吹いた。
彼のメロディは聴く人々を心地よくした。それは彼らに田舎の(のどかな)生活を思い出させたのだ。もちろん、ミダス王はパンの勝利を疑わなかった。
パンの演奏のあと、トモルスは太陽神の方を向いた。みなは静かになり彼を見つめた。アポロは竪琴を演奏し始めた。
見事なメロディが彼らのまわりに溢れた。彼らはとてもそのメロディに魅了されたので竪琴の音以外なんの音もしなかった。
すぐにトモルスはアポロの勝ちと裁定した。聴衆も裁定に同意した。しかしミダス王だけはパンの勝利を言い張り判定に不平を言ったのだ。
アポロはそんな愚かな侮辱にがまんできず、王を罰する決意をしてこう叫んだ。「ミダス王よ、おまえは自分の耳を十分活用できるとは思えないぞ。おまえはパンの演奏と私の演奏の違いを聞き分けられないではないか。たぶんおまえは耳を持っている必要はないのだろう。だから、もっとおまえにふさわしい耳を与えよう。」
アポロがそう言うやいなや、ミダスの耳はすぐに長くなっていった。そのうえ、その耳は毛が生え耳の付け根から動かせるようになったのだ。簡単に言えば、それはロバの耳のようだった。
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