不登校、引きこもり、学業不振 ━━ 総じて生きる意欲が湧かず笑顔でいられない、なんとも辛い状況だ。私は、これらをまとめて「やる気喪失SOS!発信状態」と呼んでいる。
成長過程にある(変化のベクトルを多く持っている)子どもは、外部刺激から、大人よりも大きな影響を受けやすい。だから、周りの、とりわけ身近な大人には、そのSOS!に真っ先に気づいてほしい。そして、大きな愛と細心の注意を向けて、彼らの歩みを支えていきたい。
原因(きっかけ)は何か?
やる気喪失の原因は様々だ。例えば、家族・友人・教師といった身近な人々の言動や、転居・転校など、家庭環境・生活環境・人間関係の変化や経済環境の悪化、さらにそれらの背景に事故や災害など人知を超えた影響が潜んでいることもあれば、努力が報われない焦りや失望感など、内面的とみられるような事柄の場合もある。実際には、これらが複合的に作用して、人から「やる気」を奪うのだ。広い視野の座礁軸で、「今」をとらえる必要がある。
現在進行中の悪循環であれば、その改善やそこからの即時救出などの、速やかな判断や行動が急務である。
SOS!発信状態 とは
心が大きく傷つくと、不安や不信感が膨れ上がり、他者否定・自己否定・不適応を引き起こす。そして心の内に深い闇が形成されてしまうと、自己修復力が失われ、外からの支えが不可欠となる。SOS!を発信しているのだ。
3つの大切なこと
では、どう支えるのか? SOSを感受した時、その原因やきっかけはすでに過去の事象となっていることも多い。時は戻せない。できてしまった心の傷を癒すのは愛だと思うが、その実践に際しては、次の3つのことが肝要だ。
1 共感
不登校なども、緊急避難として有効な場合もある。外に出られない、一歩踏み出せないという現状を共に受け止めることから、すべては始まる。学習意欲が湧かない、すべてに後ろ向き━━こんな状態からは喜びも勇気も生じない。しかし、今をなんとかしたい、この暗い闇からどうにかして抜け出したい!という思いは必ずあるはずだ。「SOS!発信状態」と呼ぶ所以はここにある。
その切なる本能的願いが叶わないジレンマに寄り添う、理解しようと努める。そういう者がそばにいれば、不安は徐々に小さくなるだろう。
2 信頼
膨張した不信感も退治しよう。小さな約束を互いに守るということを積み重ねていく。積み重ねていくことで、信頼が築かれ、強固になる。時には、小さな「相棒」の期待を上回る約束の守り方をしてみよう。喜びと笑顔をもたらす、お勧めサプライズだ。
3 共進(文字通り、共に進むの意)
信頼できる良き理解者が確実に一人増えたという思いと、約束を守った自己への信頼=自己肯定感が、自信を生む。自信はチャレンジ精神を育む。例えば、宿題を与えてもらうだけでなく、自ら課題を考えて取り組みたくなったりもする。
マラソンランナーと伴走するコーチのように、前進するために共に努力し合うのは、苦労はしても楽しいものだ。
家庭教師として思うこと
家庭教師の役割は、前述の「伴走するコーチ」のそれとぴったり重なると思う。
SOSのときに、マンツーマンで向き合える、勉強に特化した家庭教師はもちろん有効である。だがそれ以上に、ささいなことでもまさかの時の支えになれるような、日々の健康管理をしてくれるホームドクター的な家庭教師の存在があると、より一層心強いだろう。どんな症状でも、軽症の方が治りは早いものだから。身体も心も生き生きと楽しく過ごせるように、寄り添っていくことで共に学び、成長したい。
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