埼玉県立高校の、主として社会、国語、英語のいわゆる文系科目の過去5年分の傾向を分析した結果を説明する。
試験時間、配点は、国語、英語が50分、100点であり、社会が40分、100点である。この試験時間、配点については、この5年変化がない。
英語
1 放送問題の比率が、東京の20点、神奈川の19点と比較して、埼玉は28点とほぼ30%を占める点に注意を要する。
2 学力検査と学校選択の問題が用意されている。後者は、上位校で出題される。旧第一学区では、浦和、浦和一女、大宮、蕨等が対象となる。会話文で約650語、スピーチで約700語と長文であり、使用される単語も通常の「サンシャイン」「ニュウークラウン」などのレベルを超えた単語が出ることもある。
国語
1 出題の仕方について
大問1 配点:25点 物語文 心情の読み取り 主人公や登場人物が中高生であることが多い。
大問2 配点:22点 語句、文法
大問3 配点:25点 説明文 大意を読み取る、筆者の意見を読み取る。選択肢の問題も配点が5〜6点と、落とすと合否を分ける問題が出ている。記述式問題6点×2問であり、時間配分も注意する必要がある。
大問4 配点:12点 現代仮名遣いに直すという問題は、お約束で出ている。選択肢の問題は3点×2問出題されている。
大問5 配点:16点 自分の考えを、注意に従い書く問題。資料や討論の内容を踏
まえ、自身の経験に照らして解答することが求められる。
2 古文の分野の出題が減った傾向は、この5年変化がない。
大問5は、資料(グラフ)を読み取り、何が言えるか、自己の意見としては、どういう考えに立つかを説明することが求められている。そして、部活や地域での活動、ボランティア活動の体験に基づく意見の形成を求められる。わざわざ「体験を踏まえて書くこと」とされており、見たり聞いたりしたことは、そのことを明示して書き、伝聞か否かも採点者は見ている。また、「体験」していないことをあたかも体験したかのように書くことは減点対象となると推察される。
大問2は事前の準備がものを言う分野なので、コツコツした学習を怠らず、毎日積み重ねて欲しい分野である。
大問3は、段落数も多く、正確に速く読み、筆者の意見を素早く読み取る力が必要である。最終的に17分程度で解き切る力を身に付けることを目標にすると、時間管理の面でも良いだろう。
大問1は物語文で、心情の読み取りが必須であり、平素より漢字の学習とリンクさせ、心情語を学習することをお勧めする。場面の明暗、天候、色の明暗、時刻の推移が心情を象徴していることがあり、場面分けの参考にして、登場人物の心情を読み取っていく力を付けることが大事である。
社会
出題について 配点や大問の仕切りは概ね目安
大問1 配点:14点 お約束の世界地図 時事をからめる問題が含まれる。雨温図、円グラフの読み取り。表から読み取れることを理解しているかを問う問題が多い。
大問2 配点:15点 日本地図、表を示し、産業の理解を問う問題が多く、複数の都道府県を比較させ、その特徴を問うことが多い。国土地理院の2万5千分のTの地図を示し、地図を読み取らせる問題が頻出であり、ある意味算数的な計算が求められたり、標高を比較させられたりする問題が出ることが多い。
大問3 配点:16点 歴史分野 年表、家系図、写真などを示す出題で、その当時の政治システムや歴史上の人物のエピソードを理解しているかを問う問題が多い。
大問4 配点:15点 歴史分野 近現代史 明治以降の近現代史は、独立して必ず出題される。明治政府の統治機構の理解や、近現代史で登場する国際条約、国際機関、戦争や戦乱についての理解が問われることが多い。
大問5 配点:25点 現代の日本国憲法下の選挙制度、立法、行政、司法の仕組みや制度の理解を問う問題が多い。簡単な経済の理解も問われるので、インフレーションなどの用語の理解をお勧めする。大問5でも国際機関の理解が問われることがある。
大問6 配点:15点 時事、地理、歴史、公民融合問題 平素から新聞やニュースを見ておくことも大事であると出題者がメッセージを発していると思われる。
総括
1 学習指導要領の変更により、科目横断型の出題が増えた。
科目の基礎知識を身に付け、その知識を利用しつつ、資料を読み取り、「何が言えるか」、「どのような事実があるか」を自らの意見として、解答することが求められている。そこで、科目横断型の学習をする必要があり、家庭でのテレビ視聴中の会話や、家族旅行中の会話を通じた学習、あるいは地域での活動を通した経験に基づき、考える習慣を持つことが必要であろうと思われる。
2 意外に侮れないのが、「家庭科」である。世の法学系の書籍でも、家庭は社会の最小単位という説明がなされている。ついつい、国数英主要3科目とか、国数英理社の5科目という分類をし、序列を付けがちである。また、学習の力点の置き方も、その順序に従いがちである。
しかし、私の経験からすると、身の周りの密接な事柄を軽視すると、事件や事故の見立てが狂うことがある。この点からも、身近にある動かしがたい証拠から、じっくりと事実を確定して判断する姿勢が、今後の学習姿勢として求められるのではないかと思われる。
家庭科が侮れないと指摘したのは、ある私学高校の期末試験が、大学の法学部の【民法】の一分野「親族法」「相続法」並びに、【憲法】の「人権」分野の「平等権」の理解、「人権侵害の態様」や、それを防止することを立法目的とした法律の仕組みに対する理解、を問うていたからである。
3 「資料」の読み取り→「何が言えるか、どのような事実があるか、どのような法則があるか」という問い方は今後も続くと思われるので、それに対応した指導を心がけたい。
以上、公立高校の出題方式には、各都道府県別に独自のはっきりとした特色がある。そこを見極めて万全の対策をすることで、より手堅く合格への道筋がつかめてこよう。
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