○2020年より変わる大学入試センター試験
本年八月三十一日に文科省が公表したところによると、現在の中学二年生が受ける2020年度に大学入試センター試験に代わって始まる新テストでは、TOEFLや英検のような民間試験を国が認定し、その成績を新テストの一部として大学合否の判定に使えるようにするようだ。 まだ多くのことは決められていないが、国語や数学も記述式問題が取り入れられるほか、テストの時期や記述式の採点態勢についてもまだまだ審議中のようである。また、数学や地理歴史などで科目数が減らされる可能性もある。 世の中がグローバル化するにつれて、異文化とのコミュニケーション手段としての英語への要求がますます高まりつつある。当然、学校での英語の授業も、実用的な能力を養成するものへ重点が移りはじめている。そして、その目指すところを端的に表しているのが「英語四技能」という言葉である。 学習指導要領においても、小中高の学校教育の中で四技能、すなわち、「聞く、話す、読む、書く」という能力をバランス良く育成することが、目標とされるようになった。大学入試においても、英語の試験は四技能が標準になるであろう。我々、家庭教師はその動向に注目しなくてはならない。 ○大学入試と資格検定試験
一方、現在、四技能の全てを測定する入試を行う力がある大学は多くはない。そのせいであろうか、文部科学省も、大学入試を実施する上でのガイドラインである「大学入試選抜実施要項」の27年度版からは、TOEFLなどの四技能を測ることができる資格検定試験を活用することを推奨している。 実際、様々な大学の29年度の入試要項を見ると、試験方式の一つとして、資格検定試験を利用するところが増えている。関東圏だけでも、早稲田、明治、中央、立教、青山、法政、筑波、学習院、明治学院、独協、神田外語、上智、東京理科、玉川、聖心女子、神奈川、東京海洋、昭和女子、聖路加、お茶の水女子、亜細亜、首都大学東京などなどの多くの大学が、外部の検定を利用した入試試験を設け始めている。 たとえば、早稲田大学では、文化構想学部と文学部において、一般入試の中に「英語四技能テスト利用型」というのが設けられている。募集人数は全募集人員の二割にも満たないが、規定の検定で一定の成績を収めていれば、二月十七日の試験当日は英語の試験が免除されて、国語と地歴二教科の合計点により判定がなされるので、有資格者にとっては有利であろう。 また、明治大学の場合は2016年の7月にHPで発表されたように、経営学部の一般選抜入試の一部において、「英語4技能試験活用方式」が実施される。 馴染みのない試験もあると思われるので、それぞれの試験について簡単に説明する。 ケンブリッジ英検はケンブリッジ大学英語検定機構による国際通用性の高い英語能力検定試験で、100年以上の歴史があり、日本では75年目となる。中学校レベルのKET,高校レベルのPET、難関大学入試レベル、海外大学準備コースレベルのFCE、海外大学大学院レベルのCAE、マスターレベルのCPEの五種類のテストがある。スピーキングテストは真の能力を測る最善の方法として、受験者二名をペアにして行う対面式テストを実施。 IELTSはブリティッシュカウンシル、IELTSオーストラリア、ケンブリッジ大学英検機構の3団体で共同運営されており、アカデミックモジュールとジェネラルトレーニングモジュールがある。受験生の英語力が英語で授業を行う大学や大学院に入学できるレベルに達しているかどうかを評価するもので、英米、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏の大学の入学許可の判断基準となる。 GTEC CBTはComputer Based Testingとあるように、公開会場のコンピュータを利用して受験するものである。CEES(一般財団法人の進学基準研究機構)とベネッセによって共催されている。GTEC for Studentsは学校単位の受験で紙の試験である。 TOEFL iBTもまた、インターネットによるテストで、米国のETSという団体によって開発された。四技能ともコンピュータで受験する。ちなみに、TOEFL Junior Comprehensiveは中学生用のコンピューターベースのテストである。 TOIEC およびTOEIC S&Wもまた、ETSによる開発で、S&Wはマイク付きイヤホンでの音声録音によって解答を行い、ライティングもキーボードでタイプ入力する。 TEAPは上智大学と公益財団法人日本英語検定協会が共同で開発したもので、CEFRセファール(注1)の6段階のバンドの内、A2からB2までの力を測定するもので、上智大学が2015年よりTEAP利用型入試を導入した。 英検すなわち実用英語検定は周知のごとく、公益財団法人 日本英語検定協会によるもので、1963年から始まった、人気の高い検定試験だ。 ○終わりに
時代が移り、英語のテスト方式が変わり、生徒はこれまで以上に書く能力と話す能力を身に付けていかねばならなくなった。しかし、たとえ時代が移ろうと、変わらないことがある。それは、話す能力や聞く能力は環境に依存する面が大きいが、読み書きの能力は、たとえネイティブであっても、コツコツと努力をして習得するということである。日本在住でインターナショナルスクールに通っている、スピーキングやヒアリングはネイティブと同等の能力を有する高校生でも、時に、英検の二級に不合格になることがある所以である。 他方、いずれ、関東圏に生まれた生徒たちがさほど気負うことなく、北海道の大学に行くくらいの感覚で、外国に留学する時代が近づいているのかもしれない。しかし、まだ道のりは不透明で、この教育改革に不安を覚える生徒や保護者は少なくないだろう。 わたしの個人的感覚では、家庭教師がご家庭によばれる理由としては、英語ができすぎて塾では対応できないか、逆に苦手すぎて、やはり塾では成績が伸びないという場合が多い。その中で、やはり時代の変遷を感じるのは、当初、成績不振だったはずの生徒たちが、家庭教師がついたことで英語に自信を持つようになり、学校の外の様々な検定試験に意欲的に挑戦する勇気を得て、最終的に欧米に留学してしまうケースが増えてきたことである。 家庭教師として、生徒の夢を一段格上げする支援を提供できること以上に喜ばしいことはない。そして、そのためにも、日々の研鑽を怠らず、教育界の動きに常に注意を払っていくべきであろう。 注1) CEFR セファール(もしくはセフ) 宿題
リオオリンピックが終わり、次はいよいよ東京開催ですね。 答え い) 宮本敬美 |
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