最近、「学習障害」という言葉を耳にする機会が以前に比べ増えている。また、指導中の生徒に学習障害の疑いがあると、在学中の学校から指摘されることも珍しくない。本研修会では、学習障害の定義を確認した上で、そのような生徒を指導する際の心構えについて考えてみたい。 まず、文部科学省による学習障害の定義は以下の通りである。 学習障害(LD)の定義 <Learning Disabilities>
文部科学省ホームページより また、平成19年には、以下の通達が出された。 「発達障害」の用語の使用について 平成19年3月15日 今般、当課においては、これまでの「LD、ADHD、高機能自閉症等」との表記について、国民のわかりやすさや、他省庁との連携のしやすさ等の理由から、下記のとおり整理した上で、発達障害者支援法の定義による「発達障害」との表記に換えることとしましたのでお知らせします。 記
文部科学省ホームページより 以上の定義、通達から、文部科学省の学習障害の定義はかなりあいまいであり、また、医学上、学術上の定義とは異なることが分かる。言い換えれば、「学校(学級)運営上不都合がある」とみなされた生徒が、「学習障害」とみなされる可能性があることが疑われる。 それでは、指導中の生徒に学習障害の可能性があると学校側から指摘された場合、家庭教師はどのように対応したらよいのか。まず、なによりも重要なことは、ご家庭のご要望、質問がない限りは、軽々しい発言をしないことである。専門家の間でさえ定義があいまいな領域に対して、家庭教師が軽はずみな発言をして、ご家庭を混乱させるのは百害あって一利なしである。 ただし、学校から学習障害の判定のための心理テストを受けることを勧められた場合、 しかし、心理テストなどを受ける以前に、家庭教師の場合は、日常的に一対一で指導しているので、生徒の学習上の「癖」を把握している場合が多いと思われる。例えば、目で見て文字や文章を読み、理解するのは不得意だが、音声からの情報は受け取りやすい。あるいは長い文章を読む際に、文の後半になると前半の内容を忘れてしまい、全体の内容を統合して考えられない、などの生徒がいる。このような状態は、学習障害の特徴と一致するが、家庭教師は、「学習障害」とういう言葉で生徒を定義づけせず、むしろ学習上の個々の「癖」ととらえ、絵や、図表などを利用して、生徒の理解しやすいやり方で指導していくのがよいであろう。 最後に、「学習障害」の疑いのある生徒を指導する際の心構えだが、「できないことはさせない」「できることをさせる」、というのが一番現実的だと思える。週一回2時間の指導では、「できないこと」をできるようにさせるのは難しいし、非効率的である。一方「できること」を伸ばし、さらにできればどんどんほめるようにすることで、生徒もやる気が出てくる。そして、いつのまにか全く「できないこと」が、少しは「できること」に変わっていくことも多いのである。
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