今年4月に、自民党教育再生実行本部長の遠藤利明衆議院議員が、大学入試にTOEFLを導入しようという提案をまとめた。各新聞でも取りざたされ、同テストを実際に受けたことのない同議員が発言することに、twitterなどでの批判が相次いでいる。
果たして大学入試にTOEFL導入が考えられるのかどうかを鑑みるため、現在のTOEFLの状況を調べてみた。
TOEFLは、現在では紙による試験を終了し、その代わりにインターネットを使ったコンピューターでの試験のみが日本で行われている。
その目的は、外国人としてアメリカなど各国の大学に留学を果たそうという学習者の、大学での活躍レベルを図るためであり、その得点に応じて、入学できる大学のランクが決められている。内容も大学の講義など、大学生活を送るに支障がないかを見る非常にアカデミックなものになっている。
ちなみにケンブリッジやオックスフォード、ハーバードレベルの大学に入るためには、120点中116点以上、つまりほぼ満点を目指さねばならない。
その可能性にだめ押しの不可能性を見せつけるのが、現行の出題傾向だ。
言語を測る4つの技能、読む・聞く・話す・書く、が万遍なく試される。中でも、その中でパソコンのタイピングを要求されるエッセイ作成、淀みなく英語を話すための、録音も要求されるスピーチの項目が手厳しい。
合計、4時間弱となるこの難関を、すべての大学受験生に課すなどと、到底考えられる提案ではない。夢物語以前の妄想である。
さらに、この発言内容には多少の誤報道が混じる。本来は、「TOEFLなどを受けておく」ということだったはず。あくまで想定の範囲で発言したのではないかとは思われるが、自民党教育再生実行委員会の提案は拡大解釈された。
背景には、語学先進国となったお隣、大韓民国の教育の成功がある。
昭和30年代からさして変わりもしない学校教育を続け、意味のないステイタスづけに躍起になっている日本の英語教育に比べ、韓国の若者たるやどうだろう。
今の30代未満の世代なら、自国語の他に英語・日本語を淀みなく話す。
その成功の秘訣をぜひとも研究対象とし、語学後進国日本の教育のために貢献できれば望外の喜びだが、それはまた後の機会に譲ることにする。
ともあれ、韓国に先を越されてもなお牛歩を続ける日本の英語教育に喝を入れるべく、最も刺激的なTOEFLの名を出したのであろうが、機が熟してからという慎重さは持つべきであった。
大学入試にTOEFL導入があれば、家庭教師への特命需要も増える。そうなれば確かにビジネス路線拡大も期待できよう。
だが、そうした極論を振りかざすよりも、現行システムでいかに英語を公用語並みに使いこなせる人材を増やすか、ということに知恵を絞った方が、より賢明な選択であり、教育サイドも現実的に対処しやすいだろう。
現在、スカイプを利用した英語教材も世に出回っている。格安の教育手段も求めればいくらでも手に入る時代になった。
それでもなお高い価値とニーズを感じ、「合格請負人」であるふくろう博士のプロ家庭教師を必要とする声は、依然として限られた特定層の間に存在し続けている。
それだけの信頼と実績に応え得る家庭教師となるためには、常日頃から研鑽に励み、質とポテンシャルを高めていく以外にない。
閣僚や世論がどう動こうと、時勢が刻々変化しようと、英語教育そのものの目的と本質は、学歴社会・受験英語を無視しては語れない。つまるところ従来のメソッドのしっかりした文法理解に基づく英語を土台に、いかに国際社会で通用する生きた語学力に鍛え上げていくかが今後の課題だ。
受験生や親御さんには、やみくもに新手の情報に振り回されることなく、顔の見える=その時々の悩みや新捗状況をつぶさにわかって相談できるパートナー探しを、就活・婚活の前段階として重くお考えいただければと願っている。
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