生徒が進路を選択するときに重要なのは、本当に自らの進みたい方向に進んでいるのか、十分な準備をした上で、十分な情報を得て、進路を考えてほしいと思う。
高校段階で初めから物理を選択しなければ、物理的なものの見方がわからないまま高校を卒業することになってしまう。高校で世界史を一度も勉強しなければ、将来海外旅行に出かけても面白さが半減してしまうかもしれない。
高校の1、2年の段階では、生徒に様々な素材を提供して、3年次で生徒が最も興味を持った方向に進めるようにするのがよい。ここで素材というのは科目のことであり、理科なら物理、化学、生物、地学であり、社会なら世界史、日本史、地理、倫理、政治・経済、現代社会である。これらをある程度学んでから、高3になるときに興味がもてる科目をより深く学ぶのがよいと思う。
私自身は高3の夏までは文系科目に大変興味をもち、予習も英語・古文といった文系科目中心であった。それは勉強方法がわかっていたからだ。なぜ理系科目に目が向かわなかったかというと、勉強方法がわかっていなかったからだと今になって思う。授業を熱心に聴いていても、テストの得点が上がらないということが続いていった。そのうち興味も持てなくなってきた。文系科目と比べて、理系科目は演習的要素がより大きく、手を動かして問題を解くという地道な練習が欠かせない。その努力が自分には足りなかった。
理系嫌いが叫ばれて久しい。だが、生徒達はさまざまな科目という素材を与えられ、勉強方法を教えてくれる適切な指導を施された上で、それでもなお理科を敬遠しているということでは必ずしもないように思う。素材をあまり与えられないままだったり、自分に合った勉強方法を手ほどきされないままだったりして、その科目から離れていく生徒も多いはずだ。
私は高3の夏から受験のために理系科目を集中して勉強したが、その面白さにとりこになった。問題を解くことによって、物事の本質に一歩ずつ近づくような気がしていたのかもしれない。それで当初文系大学に入学したが、卒業後に理系への意欲が抑えきれずに、理系学部に再入学した。バイオテクノロジーを学びたいと思ったからである。大学での実験は予想以上に楽しいものだった。
現今の高校の教育では、負担の重い科目、入試で点が取りにくい科目は履修者が少ないようだ。文系の生徒は物理を選択しなかったり、理系の生徒は世界史を選択しなかったりする。履修してみたら好きになるかもしれないのに、理科を食わず嫌いの生徒も多いようだ。
どの科目も適切な指導のもとに努力して学習すれば、興味が湧いてきて、そこから自分のほんとうにやりたいことに出会えて、必ずや将来を輝かしいものにしてくれると生徒達に伝えたい。
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