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1943年、静岡県生まれ。
慶応義塾大学経済学部卒業後、第一生命保険相互会社に入社。東京、三重、福岡、ロンドンなどで勤務。
2002年、急性心筋梗塞で倒れ、定年まで2年を残して退職。東京外国大学に入学しポーランド語を勉強する。
2007年、東京外国語大学を休学してポーランドのクラクフ・ヤゲロン大学に1年間の語学留学。
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現在私は大学の4年生、留学期間を含んでもう6年目になります。この大学に入学したのが還暦直前でした。サラリーマン生活を36年した後の選択でした。誰しも定年に近づくころになるとそれ以後の生活をどうしようと真剣に悩むと思います。私の場合もそうでした。
私の場合はたまたま定年の1年前に急性心筋梗塞で倒れ、九死に一生を得ましたことから、それを機に長年勤めた会社を辞めました。しかしながら、さて、これからどうしようと困り果てました。家内からはいつも家でゴロゴロしてもらったら大変な迷惑と言われるし、家で全く身の置き所がありませんでした。それでいろいろと思案し探した結果、東京外国語大学の入試を受け、幸いポーランド語科に合格いたしました。
さて、大学生になりました。学生になると、メリットがあります。例を挙げますと ?@さて、今日は何をしようかと悩まなくてもいい ?A知的満足感(自己満足)が多少とも得られる ?Bヒマがたっぷりつぶれるし、おまけにボケ防止にもなる――ような気がする。?C若い人と交流ができ、若い人の考え方に慣れる。?Dさらに、通学定期券が買える。これは大きいです。
反対にデメリットも少しあります。たとえば、?@たまに試験がある。成績はどうでもいいと思っても、多少プライドがあるから勉強しなくてはならない。私の専攻のポーランド語はオソロシク難しい言語です。名詞、形容詞、動詞が信じられないくらい複雑に変化するし、時には気が狂いそうにもなる。?Aこの歳になると新しいことを記憶することはとても難しい。?B学費(国立大だから年60万円です)がかかる。
大体こんなところですが、メリット、デメリットの差し引き勘定は大幅なプラスと思っております。
最近の学生さんを見ると、昔の学生とは大きく違います。昔は友達と大勢で群れて行動をすること(たとえば麻雀)が多かったようですが、今の人は麻雀なんてしません。群れる学生は少ないと思います。一人でネットにはまって他人との交流を避けるタイプがよくみられます。学校にも来ず、引きこもり状態の学生も珍しくありません。全体的に「打たれ弱い、ひ弱な」タイプが増えました。もちろん健全な元気な学生も多数おります。
今の私の学生生活を振り返るとサラリーマン時代とは全く次元の異なるストレス・フリーな生活といえます。私はポーランド語専攻なので、これまで数回ポーランドに行きました。そのたびにヨーロッパから集まった若い学生さんたちと親しくなり、利害関係のない付き合いに発展することがよくありました。これは実に得がたい経験です。
国内、国外を問わず異世代の若者と交流できるなんて、これまで考えたこともありませんでしたが実に楽しいことです。我が家庭においては自分の子供にあまり相手にされることも少ないですが、ここでは皆さんに十分に相手にしてもらっています。
私が大学生になって一番よかったと思っていることは「本」を出版できたことです。産経新聞社より自分の学生生活の体験と留学生活についてまとめたものを出版したことです。最初の「63歳・東京外語大3年 老学生の日記」は1万部も売れ現在3刷の重版です。その続編「留学生は64歳」も出版いたしました。
いよいよ、これからは高齢化社会に突入します。誰にも時間だけはたっぷりあります。60歳の定年後に20年生きるとすると、なんと17万時間となります。これを何とかしなくてはなりません。何か専念できることを探さなくてはなりません。私の同世代を含めて高齢の方々で、私の見たところかなりの人が何もせず、無為に生きているような気がします。私はたまたま大学生という選択をしましたが、これも1つの方向として、参考にしていただけたら幸いです。
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