まず、生徒に「今日で受験勉強はすべてやり終えた」という達成感を与えること。あの分野は苦手だ、あそこが出題されたらどうしようという不安材料を残した受験は避けたい。自信をもって試験に臨ませたいものだ。
次に、縁起を担ぐことである。受験生のほとんどが、合格祈願のお守りを持っている。私はそれに加えて、「合格鉛筆」と称する手製のお守りを生徒に手渡している。
もう十数年前になるが、受験を控えてとてもナーバスになっていた生徒がいた。たまたま前年、受験校すべてに合格した生徒から記念として受験当日に使った鉛筆をもらってあったのを思い出し、お守りがわりにどうかと差し出したら喜んで受け取って受験に臨み、見事に合格した。それ以来、その鉛筆を「合格鉛筆」と称して毎年受験生に手渡している。一本では心許ないので、借り主(受験生)が合格したらお礼としてもう一本返すというルールも定着した。こうして受験期には数本の合格鉛筆が私の手元で出番を待っている。
たわいない遊びのようだが、中学受験生は結構真剣に受け止めている。まだ子どもの部分を残している中学受験生が、ワラをもつかむ思いで心頼みにするのは分かるが、高校受験生にもウケるのに驚いた。要するに、不安の解消であればなんでもよいのであろうが、神社のお守りと違う点は、鉛筆を入れたお守りの袋に、励ましの一言が私からの個別メッセージとして添えられていることである。 。 |