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去る2月3日、都立中高一貫校“入試”(適性検査)が行われた。今年は、昨年開校した都立白鴎高校附属中学に加え、4校(内1校は区立)が開校した。いずれも書面審査(足きり)を行う基準となる倍率を超え、数校で“足きり”が行われるという人気の高さである。無事書面審査に合格できても、最終合格を果たすには6倍〜10倍の関門を突破しなければならない。まさに新たな超難関校の出現である。
そこで、この“新たな超難関校”である都立中高一貫校の“入試制度”、“入試問題”を分析し、出題傾向と対策・学習のポイントを簡単にまとめておきたい。 |
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2. 都立中高一貫校“入試制度”(入学者の決定方法) |
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「報告書」、「適性検査」の結果をそれぞれ点数化し、その合計点で判定する。
※ 報告書と適性検査の合否判定における比重は、各校でまちまちなので要注意。 |
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ア. |
報告書 … 出身小学校の5〜6年の内申を各校の換算表により点数化。 |
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書類審査(応募者が募集人員の6〜10倍を超えた場合、足きり)を行う際の判定資料にもなる。(ただし、千代田区立九段中等教育学校は書面審査を実施しない。)したがって、学校の成績で適性検査を受検できるか否かが決まってしまう。 |
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イ. |
適性検査… 各教科ごとの学力テストは行わないという取り決めがあるため、総合的 な学力をみる出題内容となっている。 |
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私立中学の入試問題とはかなり異なった出題傾向である。合格を目指すなら、出題傾向に合わせた準備、対策は不可欠であろう。 |
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(1)適性検査問題の傾向(要求される学力要素) |
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◆身近な社会的事象をテーマにして、国語、算数、理科、社会等の各要素を組み合わせ、盛り込んだ総合的な内容。
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問題の発見、原因・理由の分析・考察、解決方法の発見・工夫、ルールに従った処理・作業などが課される。洞察力、柔軟な思考力、臨機応変な対応力が要求される。
※基本的に、知識を試す問題ではないので、知識を詰め込む勉強は特に必要ない。
ただし、表現力の基礎となる語彙、漢字の学習は必要である。
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◆ 記述(図や式等を使って説明するなど)、論述(400~600字)形式の出題が中心。 |
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自分の考えを的確に表現する力、論理的に説明する文章力が要求される。
※コミュニケーション能力の高い生徒が求められているようである。
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◆ 会話形式の問題文 |
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会話の中に言葉の説明や考え方、ヒントなどが含まれているので、素早く正確に読み取り、その場で理解する力が要求される。
※会話文の読み取り自体は容易だが、設問文の中には読み取りに骨の折れるものがある。また、長文読解(小石川)、放送聞き取り(両国)問題を出題する学校もある。 |
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(2) 対策 |
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(1) |
学力要素を診断 ⇒ |
過去問を解き、弱点、補強すべき学力要素を知る。
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(2) |
教材の決定 ⇒ |
上記のような出題傾向、出題形式の特殊性から実戦的な演習は不可欠であるが、現在のところ、その目的に適った学習素材は限られている。過去問・サンプル問題集、市販の問題集だけでは演習量としては不十分である。模擬テスト、通信添削を利用するなどして十分な演習量を確保する必要があろう。
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(3) |
出題パターン別の学習・指導ポイント |
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◆ グラフ、表、図、写真等の資料読み取り・分析問題
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・複数のグラフや表を相互に関連させて読み取る練習
← 何を表すグラフ、表なのかしっかり確認
・変化の仕方の特徴、違いや共通点の発見と原因・理由の分析・考察練習
← 質疑応答形式で解答に必要な要素を確認
・考えや説明を設問に従って的確に表現する練習
← 説明文の書き方のパターンを用意し、反復練習
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◆ ルールに従った作業・処理問題 |
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・ルールの正確な読み取り(理解)練習
← 複数の条件を設定したゲーム遊びなどで練習
・ルール違反の有無の確認を習慣づけ
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◆ 論理的思考・推理問題 |
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・私立中学入試の論理・推理問題などで練習
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◆作文・論述問題 |
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・基礎的表現力の向上
← 正しい文を書く練習を毎日行う。
1.漢字、語彙、表現(慣用句、熟語等)の知識と用法の習得
2.慣用句、熟語、接続語等を用いた短文を書く練習
3.主述の対応、句読点の打ち方、助詞・副詞等の使い方、同語反復、
文の長さ、原稿用紙の使い方等のチェック
4.100字→600字へと徐々に字数を増やしながら、実戦的に練習
5.字数不足、字数過多の場合の対処の仕方を覚える
・題意の正確な読み取り
← 設問文の表現に注意を払わせる。
※ テーマは同じでも出題意図が異なる場合があることを理解させ、
類題での題意把握ミスを防止。
書くべきポイントを設問文から抽出させる。
・文章構成練習
← 段落構成の方法を理解させるとともに、ディベート型などの出題パターン
に合わせた構成パターンを予め用意し練習する。 |
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以上、簡単ではあるが都立中高一貫校“入試”について分析を行い、学習のポイント等を述べてきたが、生徒に合った効果的な受験勉強の方法・対策は、生徒の学力状況に応じて個別に考えていかねばならないことは言うまでもない。したがって、生徒の学力状況を的確に判断できる良き指導者につくことが合格への近道となろう。
来年度以降も進学率の高い公立高校のもとに中高一貫校の設置が予定されている。したがって、家庭の関心の高い状況は当分続くであろう。このような傾向に対応する形で、大手の進学塾も専門コースを設けるなど対応を始めているが、なにぶんにも始まったばかりの“入試”制度である。まだまだ集団指導のノウハウを蓄積している段階といったところである。
本学院の家庭教師としては、個別指導のプロとして、入試制度の特徴、適性検査の出題内容及び傾向を速やかに分析・研究し、来年度の“入試”にも十分対応できる“即戦的指導力”を身に付けておく必要があろう。その意味でも、このレポートが参考になれば幸いである。 |