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昭和18年京都市生まれ。43年京都外国語大学英米学科卒業。
同時通訳、翻訳、英会話学校講師などを経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師。
ネイティブの頭で英語を発想する独自の「西村式」メソッドを完成し、多くの英語学習者に感銘を与えている。
著書は、『理屈でわかる英文法』『これが英語の謎の正体だ』『これが前置詞の正体だ』『恐ろしいほどヒアリングが出来る本』など多数。
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今の教育現場は、<メソッド>がないから、生徒を前にして、何をどう教えていいかわからない。私は、「教える」というより、「救う」つもりで、いつも必ず自分が出向いて話をしている。 100%でなくても、まず60%の英語を話せるように!というのが、西村式である。
<英語のマインド―力と方向―を理解しよう>
一番大切なのは、日本語と英語の発想の違いを知ることである。日本語の「食べる」は、どこまでいっても「食べる」の意味しか出てこない。それと異なり、英語の動詞は13の力と方向で意味が決まってきており、また全ての動詞に外向きの意味と内向きの意味がある。その結果、一つの動詞が様々な日本語訳を持つようになるのである。力と方向で考えるのが西洋のマインドであるということを理解して頂きたい。 例えば、<take>という動詞を考えてみよう。 <take>を「取る」とだけ教えると、I’ll take the bus. という文を訳すとき、「バスを取る」と訳すことになり、学校の英語教育は破綻する。
<take>には、外向きには「動いて加わる」、内向きには「動かして加える」、そして「心で受け止める」、という意味がある。
外向きに「動いて加わる」場合、バスなら、バスに動いて加わるから、「乗る」。風呂に動いて加われば「入る」。椅子なら「座る」になる。
内向きに「動かして加える」場合、鮨なら、動かして自分に加えるから「食べる」。セーターなら「着る」となる。
Take it easy. という文の場合、「それをたやすく心で受け止める」と言う意味になるわけだ。
次に、<have>を考えてみよう。
<have>の意味は、「既に加わっている」「習慣上何かが加わっている」「何かを加えてもらう」である。
「我々+大雪」で、我々に大雪が加わった。→ We have much snow.となる。
He has a nice sweater.
He + sweater だから、「着ている」になる。それに対して、
He takes a nice sweater.
の場合、セーターを動かして加えるわけだから「着る」になる。
小学生に英語を教える場合には、ぜひhave や take といった基本語のマインドをきちっと教えてほしい。
<前置詞のマインド>
日本の英語教育では、方向の教育がなされていないので、動詞だけでなく、前置詞も理解できないという問題が生じている。
例えば<down>は、普通、下と教えるが、本来は「下方向」を表し、その結果下りきった「今いるところ」「その場」をも表す。したがって、Come down! と言ったら、「今いるところ」に来なさい、という意味になる。
また、<to>は一方通行、<for>は往復運動と理解してほしい。
She was scolded for breaking the window.
彼女は窓を壊したことに対する反対方向の運動として、叱られたわけだ。
<英語は腹式呼吸で>
英語は腹式呼吸で話す。一息で文頭から文末まで話すわけだ。吐く息の上に音が乗るから、最後に行くほど単語が伸びる。
発音上達のコツは、p t k b v を省いて読む練習をすることであり、それは同時にリスニングの訓練にもなる。
<英語の文のマインド>
英語の文章では、因果関係が成立しないと文とは言えない。どうして疲れたのか、なぜ空腹なのか、風邪をひいたからどうしたのかなど、原因・結果をはっきりさせるのが英語のマインドである。
そして、原因→結果をing形で表し、結果→原因を形容詞や過去分詞で表すのである。
形容詞・過去分詞は、結果の出ている世界をいう。be動詞は動作や行為をした結果だが、
本来、過去の状態が現在も存続している状態をいう。
They were married.
結婚したという過去の出来事を married という過去分詞で表し、その結果が現在も存続していることを be動詞で表現している。
それに対し、現在完了形は、いつからいつまでという、期間が特定できる場合にしか使えない。過去の動作、過去に始めた動作、始めていない動作が特定の期間存続しているものを現在完了形という。
受身形は、100%他の力による場合を表現している。前置詞で考えれば、100%それのみの力による場合にはby、他の力に道具として利用された場合にはwith を用いることになる。( I cut it by a knife. とか、I was killed by a knife. という文では、ナイフがナイフ自身の意志と力で動いたことになる。)
<英文の語順>
英文をつくる際の語順は、以下のようになる。
(1)何が言いたいか( S+V 〜)、(2)場所、(3)時、(4)期間(いつからいつまで)、(5)付帯状況( with、〜と一緒に、何人で)、(6)どうやって( how )、(7)〜のかわりに、(8)〜しないで( without )、(9)〜にもかかわらず( in spite of )、(10)その他2語以上からなる副詞語句、(11)to+動詞原形〜、(12)接続詞〜
ぜひ、この語順を参考にしてほしい。
中学生では、単語の並べ方がわかると、辞書を引きながらでも文章を作る喜びが生まれる。そうなれば質問が出てくるし、英語学習も一段と進むだろう。
<冠詞などのマインド>
最後に冠詞などについて整理してみよう。
何が何だかわからないもの・・・something
何かがはっきりわかるもの・・・ a (ただし、類似品がある・区別できないものがいっぱいある場合)
複数ある中で特定したい場合・・・any
自分と相手(コミュニケーションを結ぶもの同士)が分かっているもの・・・the
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<終わりに>
長年教師をやってきたが、旅先でエンストに遭い、タクシーの運転手さんに親切にしてもらった体験から、人は自分だけで生きているのではない、人に助けられて共々生かされている、ということを実感した。
我々の仕事でも、最初は「教えさせてもらっている」という気分だったのが、だんだん「教えている」から「教える喜びを感じている」に変わってくる。これを通り越し、「教えてやっている」になったら、先生は終わりである。「死ぬまで勉強」という姿勢でやらなければならない。 |
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