|
数学とは科学であると思いがちだが、数学には客観的事実は何もない。たとえば、数学における直線は、幅がなく、長さが無限である。直線ひとつとっても我々の頭の中にしか存在しない。数学は、純粋に我々の頭の中の思考の産物で、客観的なものではない。ということは数学を理解するには、頭の働きがすべてであるといえる。我々の頭の中には数学を理解する構造があるはずである。そこを頼って我々は数学を共通の認識として勉強している。 しかし、頭の中で考えることは、個人それぞれみんなばらばらである。ばらばらのものを訓練によって共通の認識を持つようにもっていく。それが数学の指導だと思う。 数学を学んでいくうえで必要な要素は、A)論理的思考、B)定義・概念の正しい理解、C)読解力である。生徒が間違ってしまうのは、このどれかが弱いからだ。 論理的思考は、正しいものから正しいものを導き出す思考である。数学は、論理的思考の塊と言ってもよく、論理的思考を鍛えることが我々家庭教師の役目である。事実のつながりから答えを出すのだから、適当なところから情報を探してきてはいけない。常に自分がやっていることが事実なのかを認識させる指導をしなくてはいけない。 定義・概念の正しい理解は、事実の基礎の理解である。事実の積み重ねの数学において、事実の基礎となるのが言葉の定義や概念であり、これがあいまいだと論理は成り立たない。正確な定義を知らないと、誤った類推をしてしまう。あるいは間違った思い込みをしてしまう。教科書で定義・概念をしっかり学ばせ、はっきりとさせておくことが必要である。定義・概念をしっかり理解した上で、論理的思考は成り立つことを忘れてはいけない。 複雑な問題は、読解力がないと解けないが、基本的な日本語さえできていない生徒もいる。数学の言葉は、ある種特殊なので、日本語だからわかるだろうと油断せずに教えるべきである。 A・B・Cはそれぞれに関連性をもって、結びついている。これらのほかに数学に必要な要素として、D)図形に対する感覚があげられる。これには個人差がかなりある。図形に弱い子は、平行四辺形を書いてもいびつになってしまう。立方体の見取り図が描けない。このような生徒に図形の難しい問題を時間をかけて教えても成果は期待できないので、生徒の技量を見極めた上で、ここは基本的な問題だけにして、他の分野で得点することを考えたほうがよいだろう。 |