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今月の国語の時間は、古文の「物語」を採り上げその魅力に迫ってみよう。 時代(とき)は平安。女流の手になる、仮名文字で書かれた日記や物語が隆盛を迎え、貴族社会の成熟とともに日本の文学的伝統が一気に花開いた時代。 ここで一つ、古典文学を理解する上で避けては通れない、平安時代の婚姻制度についてざっと解説しておこう。ただし当時、和歌や物語などの教養的たしなみは、作り手も享受する側も余裕のある貴族と相場が決まっていたから、我々が一般常識として問題にするのは、庶民ではなく貴族階層を中心とした雅(みやび)な世界の話と理解しておいてね。 当時の結婚というのは一夫多妻制で、男には正妻の他に外に何人も愛人(=妻)がいた。また、現代(いま)の言葉だと「逆玉」ということになろうか、生活の面倒は一切合財妻の実家でみることになっており、男は後楯(うしろだて)のしっかりした女性と婚姻を結ぶのが、出世の早道。 それでは、恋愛から結婚へはどういう手順で進行するのか。 男が気の向いた女の許(もと)に出向くという「通い婚」形式が常套(じょうとう)であったため、女の側からすれば、どうしようもないことだと諦(あきら)めてはいても、超えられない嫉妬(しっと)や愛憎が生まれ、それが当時の女流作品の中に文学的な深まりとなって色濃く反映されているんだ。 そういった時代背景を頭において、12月29日の毎日中学生新聞高校合格講座に掲載さ 『落窪物語』でテーマとなっているように、当時の社会では継母(ままはは)と継子(ままこ)の関係がありふれていて、昔の人々はハラハラドキドキしながらも、他人事とは思えない気持ちで読んだのだろう。 |
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げに恐ろしきは「継子いじめ」。でも、現代(いま)の感覚で読んでいくと、ひと昔前の紙芝居(私も古いネ!)の世界で、継子のかわいがっていた猫が継母にいじめ殺されて(確かそうだったと思う)化け猫になったのを見てヒョエ〜と思ったような、ある種パロディ的な面白さが感じられないかな。 実はこのお話はさらに継母によるいじめがエスカレートして壮絶な修羅場になっていくんだけど、やがて落窪の女君に良縁が持ち上がり、救世主となる白馬の王子様が現れて、憎っくき継母に二人でリベンジを果たし、二人は幸せに暮らしてめでたしめでたし!で終わるんだよ。 話の展開が実にソープドラマ的と言おうか、安手のメロドラマを無理やりハッピーエンドにもっていっちゃってるような展開で、その後の『源氏物語』や『蜻蛉(かげろう)日記』に至って描き尽くされることになる、深い情念や女の怨嗟(えんさ)(=恨みつらみ)まではきこえてこないのが、完成度の水準からみて惜しいところだ。 |