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十月、国語の部屋へようこそ。 さて、みんなは竹から生まれたかぐや姫のお話『竹取物語』を、アニメや絵本で一度は聞いたことがあるよね?『たんすにゴン』の沢口靖子主演で、映画になったこともあるんだよ。日本でいちばん古い物語がこれで、『物語の出で来始めの祖』と言われている。今から千百年以上も昔に書かれたものだ。それにしても、生まれた時三寸(九センチ)ほどだったかぐや姫が三ヶ月で大人に成長したり、月の都から大軍団が迎えに来たりと、ありえないことがたくさん起こる。発想がなかなかSF的だね。昔の人って想像力がありあまっていたのかもしれないね。 『竹取の翁が光る竹を見つけたとき、適当に切ったのに、中にいたかぐや姫が切れてしまわなかったのはなぜか?』答え『天上界の人が、翁の斧が竹に入った瞬間に、月の世界のかぐや姫をテレポートさせたから』なんて、現代でも冗談のタネにされているよ。 月世界の人間はみんな超能力の持主なんだね。九月の合格講座では、かぐや姫が月を見て泣いている場面を取り上げたよね。その続きでは、かぐや姫を守るために帝が二千人の貴族や兵士を翁の家に派遣する。翁は、『月からの迎えが来たら、髪をつかんで引きずり落とし、お尻をむき出しにして貴族たちの前にさらして恥をかかせてやる』などと大まじめに力んで、かぐや姫に『声が大きいですわよ』なんて叱られたりしているんだけど、いよいよ天人の迎えがやって来ると、兵士たちは金縛りにあったように動けなくなって、弓を射ようとしても矢はひょろひょろと変な方へ飛んで行ってしまう。天人の王が『いざ、かぐや姫。汚き所にいつまでいらっしゃるのか』と声をかけると、屋敷中の扉という扉は自動ドアと化してするすると開いてしまうんだ。 |
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じつは『竹取物語』は、オリジナルの創作ではなく、いろいろな伝承やおとぎ話をもとにして作られたものと言われている。最近になって、チベットに竹から生まれた女の子のそっくりな物語があることがわかった。この話は、竹の中で泣いていた赤ん坊があっという間に娘に成長するところや、五人の求婚者が出てくるところ、姫が五人に出した難題の内容までそっくりなんだ。また、八月十五夜の月をめでる習慣は、ちょうど『竹取物語』のできたころ、中国から伝わったもの。中国でもヨーロッパでも、太陽を男性、月を女性と結びつけて考えていたけど、古代の日本ではそれと反対に太陽の神が天照大神という女性、月の神が月読の命(つくよみのみこと)という男性とされていた。それどころか、女性が『月の顔を見るは忌むこと(月をまともに見つめてはならない)』というタブーまであったくらいなんだよ。 ここで紹介できない他のいろいろな伝説もあるけれど、『竹取物語』の生き生きした描写、とくに最後の月へ帰ってゆく場面なんかは、もとになったどの話より抜群に面白い。漢文の学識の深い男性(僧正遍昭という説あり)が腕をふるった自慢の作品なんだ。 |